「ジャムゥ」というのは、パンに塗って食べるあのジャムではなく、古くからインドネシアに伝わる薬のことで、日本で言うと漢方薬のようなものです。富山の薬売りではないですが、たいていおばさんがふろしきのような大きな袋に、コーヒー牛乳のような色の液体を詰めた一升瓶くらいの瓶を何本か入れて、サンタクロースのようにその袋を背負って町中を売り歩いています。

 

私は気味が悪くて飲む気がしないものでしたが、インドネシアの人はさかんにジャムゥ売りのおばさんをつかまえて飲んでいました。声をかけられたおばさんはおもむろに大きな荷物を地べたに降ろし、ちょっと曇り気味のガラスのコップを袋から取り出して、瓶からその液体を流し込みます。客は渡されたコップ一杯のその液体を、ほとんど一気飲みで喉に流し込みます。いわゆるインドネシア版リポビタンのような健康ドリンクと言って良いでしょう。ちなみに本家リポビタンもインドネシアに進出して現地生産されており、結構人気があります。

 

昨今は街の薬局でカプセルになったジャムゥを売っており、現地会社にいた日本人の同僚がこのジャムゥカプセルを愛飲していたので、私も試しに飲んだことがありましたが、元気が出るどころか気持ち悪くなってしまいました。

 

インドネシアでは風邪をひいたときに、日本の500円玉くらいの大きなルピア硬貨の縁のぎざぎざ部分で、背中を上から下まで強く擦り付ける民間療法があります。ちょうど背骨に沿って何本かの赤く膨れた線が走るようになる、日本の乾布摩擦と同じような効果を狙っているようなもので、日本人でもこれで風邪が治ったという人がいました。でも必ずしも清潔と思えない硬貨で皮膚を傷つけているわけで、私は衛生上あまりお薦めできません。

 

もちろん近代医学が無いわけではなく、設備の整った総合病院もあります。ただ一般庶民にとって社会保険制度の無いインドネシアでは、高い診療費の負担が障害になることや、医者があまり信用されていないことなど、病院に行くのは余程切羽詰まったときのようで、普段は縁遠いところのようです。

 

私事ですが、高熱が何日か続き食欲も無くなってしまったとき、日本に留学経験のあるインドネシア人の先生に診てもらったことがあります。恐ろしかったのはその先生ではなく、日本から持っていった風邪薬や解熱剤が全く効かなかったのにもかかわらず、その先生に処方された薬を1錠飲むと、即効で1時間後には熱が引き食欲も出て元気になってしまったことでした。

 

後で聞いてわかったのですが、その薬は日本で通常処方する倍の量の抗生物質だったので良く効いて当たり前とのことでした。確かに100円玉くらいの大きな錠剤で、飲み込むときに喉に引っかかりそうになりました。日本ではすぐ隔離となるような大変な病気を通院で治してしまっている国ですから、副作用のことより治療効果を優先して強力な薬を処方しているのが実情のようです。

 

ですから効き目が出たとわかったら薬を飲むのを止めるのが肝要となります。とかく律義な日本人には病気が治ったのにもかかわらず処方された3日分とか4日分の薬を全部飲んでしまう人がいて、それで肝臓を悪くして任期途中で帰国を余儀なくされた人もいました。

 

(夕暮れ@バンドゥン)
 


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