えっ??カヴァーって??
音楽でもないのにカヴァーですか?
発想が面白いと思った。
最近、旧作をリメイクするというのが流行らしい邦画界で、
新たなアプローチをしたのが石井克人監督。
わたしは「茶の味」は未見なのですが、多分大好きなテイストだろうと思ってます。
で、今回タダポイントもあるし、時間もぽっかり空いたのでと、
軽い気分で観賞しました。
するとレディースディでもないのに、「本日は1000円でご覧になれます」と!
なんだかいたれり尽くせり、それほど贅沢でもないのに感じのとてもよい
心づくしの旅館に来たかのようだ。
なんでも「心の入浴料」なんだそう。
さすがにCMディレクター、企画もよく、プレゼンもうまけりゃ、
セッティングもうまいと感じました。
しかも狙った感がないし。
いや、そりゃ狙ってはいるでしょう。
キャストが草なぎ剛、加瀬亮、堤真一、三浦友和、etc・・・
う~~ん、なんで草なぎ君の画像がないのだ!
半目の目の見えない感じの演技がちょっと気負いすぎかもと感じたけれど、
オリジナルをそのまま真似てるんですね。
「いい人」の代名詞のような草なぎ剛、
徳市の役柄はちょっと女好きでカンが鋭くて、
結構プライドも高くて、今までの役柄よりも「複雑さ」が出ていたと思います。
あと、加瀬亮演じる福市の無色透明な感じがすごくよかったです。
東京から来た男と一緒にやってきた「坊や」に鼻をこちょこちょされるシーンなんか
ユーモラスでよかったですね。
みな俳優さんたちがとても自然体でしたね。
風景に負けてる感じではなく、すっかり”溶け込んで”ました。
まるっきりカヴァーしてるだけにセリフや動きに時々違和感がありましたが、
それも含めて味があります。
あ、そうそうほんの数秒のシーンに「松ヶ根乱射事件」の警官
そのままのような新井浩文も出てる贅沢さ!
これがデビューだというモデルの「マイコ」もこの役に合っていましたね。
美術もロケも、音響もとてもこだわりがあって素晴らしかったです。
もちろん、脚本も。
オリジナルの清水宏監督の「按摩と女」はすっかり知りませんでした。
多分、知らない人のほうが多い、でも、とってもすぐれた名作を
現代の最高のものを使ってカヴァーしようとする、その心意気はいいですね。
古くてひなびた日本家屋をグレードアップして
現代の技術を総動員して”ビフォアーアフターした匠の技”って感じ。
でもそれには土台がしっかりしてないとね。
オリジナルの「按摩と女」が相当面白いのだろうなと想像できますね。
(オリジナルは高峰三枝子に佐分利信!)
どうして?なぜ○澤を今さらリメイク?なんて疑心暗鬼が全くない(苦笑)
「戦前の作品なのにめっちゃ面白かった!でもネットで調べてもほとんど情報がないなんて!」
「劣化している作品をもう一度自分の手で高品質、高画像で見てみたい!」
そんなシンプルな動機には説得力がありますね。
これは拾い物!
邦画もいいなって感じます。
今回の「カヴァー」に関連して清水宏監督の
オリジナルも続々とDVDリリースされるんだそうです。
小津安二郎と並ぶ巨匠なのに今では全く流通していなかった
名作、とても興味あります。
埋もれていた名作をもう一度世に出したかった。
その思いでこの作品を作ったのなら
とても贅沢な仕上がりなんではないかと思いますね。
山のせせらぎ、滝の音、鳥の鳴き声、かえるの鳴き声、下駄の音・・・・
音響もバツグンですから。
目にも耳にも全てにおいて「シズル感200パーセント増し」です(笑)
テレビドラマ枠でも十分だったと思いますが、
1000円で劇場で見られるのならいい企画だと思いました。