国選弁護人のH弁護士は79歳と言う高齢にも関わらず、O弁護士と違ってよく動いて下さいました。まずは、控訴審の争点を二つの方向より立ち向かう方法を取りました。
一つ目は、原判決の被害者の死亡の原因が被告人の暴行によるものとしている点に、事実誤認があること。私が肘打ちの暴行を加え体重が掛かったものとされているが、実は、救急隊員の心臓マッサージ時において、肋骨の骨折が起きた可能性もあり、それが左血胸を起こしたのではないかと言う点が検証されていないと言う点です。
もう一つが、被告人が罪の重大さをようやく理解出来る状態になり、真摯に反省している点。つまり、第一審では暴行をしていない旨の否認をしたけれど、今回は暴行をしたことを認めることにし反省を深めていると言うことで情状酌量面に訴えることにしたのです。(本当は暴行していませんが)
以上の二点を控訴趣意書に盛込みました。控訴審では、私を出廷させ10分程度の尋問を行なうことが決定致しました。一方、検察側の答弁書では、理由がないと反論して来ました。
そして、2009年10月22日、10時30分より、名古屋高等裁判所にて、控訴審が行なわれました。
そして私は、裁判官に向かって、反省面のみの内容を話したのです。意外なことに、検察側の反対尋問もなく、すぐに終わってしまいました。
そして、控訴審判決公判は、11月17日、15時30分から行なわれました。大抵の場合、控訴も棄却され、原判決のままが多いです。
「被告人証言台へ」
裁判官に促され、私は何の期待もせずに、証言台に立ちました。すると、意外な言葉が聞こえて来たのです。
「主文、原判決を破棄する。被告人を懲役3年6か月に処する。原審における未決勾留日数中50日をその刑に参入する。」
執行猶予を付けるまでは行かないが、この状況下と真摯な反省に対して、原判決が重すぎると言う説明でした。六カ月の減刑をされたのです。
拘置所に戻り担当職員に報告すると、驚いた様子で
「岩本、良かったな。」
と言ってくれました。
判決公判翌日、国選弁護人として尽力を尽くしてくれたH弁護士が面会に来てくれました。これでお別れになるけど、最後に何か頼むことないかと言われたので、現金を宅下げしますから、下着とズボンを買って差し入れして下さいませんかと頼むと、快く了承してくれました。
その後、色々考えましたが、懲役3年6カ月に刑が短縮されたとは言え、懲役3年以下でないと執行猶予は付きません。一途の望みに掛けて上告期限ギリギリの11月30日に、上告の申し立てを東京の最高裁判所へ行ないました。
これには、もう一つの目的があって、最初のO弁護士がやってくれなかった保釈を認めさせ、自宅の腐った冷蔵庫などを片付けてから、刑務所へ行きたかったからです。(傷害致死罪による保釈はまず認められませんが)
上告審は、東京の最高裁判所の管轄です。通常、法廷は開かれず、書面審査になります。結果もよっぽどの事がない限り、棄却されて、高裁での判決が確定することが殆どです。
私は、上告審でも、国選弁護人を依頼しました。すると、東京の弁護士が決まりました。一度も会うことなく、手紙で説明を繰り返し、最高裁判所へ、上告趣意書と保釈申請書を提出しました。
また、拘置所の中で見た雑誌の広告に、保釈金を建て替える機関があり、申し込んで準備を進めました。
その後、拘置所で、クリスマス、正月を迎えることとなりました。クリスマスには小さなケーキが出て、正月にはおせちの折詰が出ました。娑婆での生活を思い出し、号泣しました。
年も明け、桜の咲く2010年3月に入り、最高裁判所から結果が届きました。
「主文、本件上告を棄却する。」
「保釈請求を却下する。」
たったこれだけです。懲役3年6カ月の確定です。法廷闘争は全て終わりました。上告が棄却されるのは当たり前のこと、別に驚きもしませんでしたが、保釈が却下されたことになると、借家はあのまま、腐った冷蔵庫、溢れる郵便物、誰も片付けもしてくれない。無念としか言いようがありませんでした。
でも、事実は冤罪であります。私と母がケンカして、二人して倒れ込んで私の体重が胸部にかかった。最初の通報で、母をぶん殴ったと言ったことから、私が肘打ちをして暴行して死なせたと言うことになってしまったのです。時は既に遅しです。【一度言った言葉は、決して法廷では覆らない。】
そして、3月17日より、刑が確定しました。身分が被告人より受刑者となります。刑務所に移送されるまでは拘置所にいるのですが、大きく変わる点があります。下記の点です。
・坊主頭になる。
・私服から、囚人服へ。
・お菓子等、嗜好品が食べれなくなる。
・面会、発信の制限。
・居室内でやれる作業開始。
しかし、人が多すぎて、私の場合、作業すらすることなく移送されることになるのです。
移送前に、分類面接をし、移送先が決まります。大抵は、初犯で短期刑の刑務所となるので、この管区では、三重刑務所か福井刑務所になることが多いです。
しかし、この時には意外な場所に連れて行かれることになろうとは、移送当日まで分からなかたのです。
続く〜