『シチリア・サマー』
昔『ボーイズ・ドント・クライ』を観て以来
この手の映画を観るのは意図的に避けていたんだけどね。
あれこれ始めてからは、普通に観るようになってしまった。
そんなわけで今回の『シチリア・サマー』は2人の少年の恋愛模様を描いた作品になります。
時は1982年。
毎日のように近所のワルたちからバカにされ、母親やその恋人からもないがしろにされていた。
ジャンニが同性愛者だったからだよ。
信じられないけど、たったそれだけの理由なんだよ。
近所のワルのリーダーの恋人が決定的な瞬間を目撃し、そのことを口にしてしまいその結果、ね・・・
悪気があってのことなのか、ついうっかりかは分からないけど、その子だけはジャンニの味方になってくれるときもあった。
そしてワルたちのボスも本当はジャンニのことが好きだった。
ボスは同性愛者だということを隠していたのか、両性愛者なのかはわからないけど。
とにかく、詳しくは描かれないんだけど、それ以来ジャンニはバカにされ、嫌われ、母親からも見放されていた。
一方、決して裕福ではないけど大所帯で生活する16歳のニーノ
花火職人の父の手伝いをしていたニーノは明るく優しい少年。
そんなニーノはある日、誕生日プレゼントとしてバイクをプレゼントされるんだ。
それがうれしくて
ニーノは早速バイクで走りに行くんだけど
その途中でニーノはバイクを客に届けに行く最中だったジャンニと衝突してしまう。
倒れて意識が朦朧とするジャンニにニーノは人工呼吸をして、ジャンニも意識を取り戻す。
ニーノの父の兄が運営する採石場の仕事の世話をしてもらい、やがては花火職人となるニーノの手伝いもするようになる。
そんなジャンニをニーノの父は、自分の子供のように誇らしく思い、ジャンニへの感謝を伝える。
しかし・・・
この映画は実際に起こった事件を元にしてつくられた映画なんだ。
想像の通りだよ。
この事件は当時のイタリアを震撼させ、今日までイタリア最大規模の団体として活動を続けるLGBTIに関する非営利団体"ARCIGAY(アルチゲイ)"が設立されるきっかけとなった。この事件で有罪判決を受けたものは未だにいない。
わたしは事件のことは知らなかったんだけど、観に行く前々日の仕事中に2人が殺害されることを知ったよ。
偶然だけどね。
だけど、映画の中ではエンドロールの直前になるから、ネタバレしてしまったことは気にならなかったかな。
なんなら、観ていてそのことを忘れてしまうぐらいにはのめり込んでいたよ。
そうだね。
ジャンニとニーノが惹かれ合っていく姿は美しかった
いつも暗い表情だったジャンニが、ニーノと出会って変わっていく姿は本当にうれしかった。
だからこそ、同性愛者だというたったそれだけの理由で、2人への人々の態度が一変してしまうのが本当に恐ろしくもあった。
ニーノの父親はニーノとジャンニの関係をただの友だちだと思っていたし、ジャンニがニーノの手伝いをしてニーノが花火職人として成長していくのがうれしかったんだ。
しかも、ジャンニはいい子だから、本当にジャンニに対して感謝していたし、誇りに思っていた。
だけど、ジャンニが同性愛者だと知ってしまう。
最初に知ったのはニーノのお母さんで、多分近所の人からウワサのようなものを聞かされるんだ。
それに対して戸惑い、(同性愛は)許されないことだとニーノのお母さんは思うんだけど、確証があるわけではないしそこでギリギリ留まっていた。
だけど、ニーノのお母さんに対してはっきりとジャンニが同性愛者だと告げるやつが現れるんだ。
ジャンニの母親だよ。
実はジャンニは以前、別の少年と恋に落ち、そのことがバレてしまって矯正施設に送り込まれたことがあったらしい。
そして、それが原因で近所のワルたちからバカにされ、忌み嫌われることになるんだけど、その時の相手はどうやら人生取り返しのつかないことになってしまったらしい。
そのことをジャンニの母親は悔やんでいて、自分の子どもが同性愛者として忌み嫌われるのは自業自得だからいいけど、他の家の子どもまで巻き込んでしまうのは申し訳無さすぎる。
そんな理由でニーノのお母さんに電話で告げるんだ。
今ならまだ戻れますって。
血のつながりなんてしょせんただそれだけで、本当に無意味だよ。
でも、仮に同性愛が許されない世の中だったら、それこそ死に値するとして一方的に断罪されてしまう世の中だったら・・・
そう思うと、ジャンニの母親のしたことは理解したくないけど、分からなくもない。
そう思ってしまう自分もいて、それが何だか悔しくもあった。
もちろん、だからといってジャンニの母親がしたことは絶対に許されないけど。
そして、何より恐ろしかったのは、そのことを知ったニーノの父親の変貌ぶりだった。
本当に驚くほど態度を一変させるんだよ。
ただジャンニが同性愛者だと知っただけだよ?
影でとんでもなく悪いことをしていたとか、そういうことではなくて。
ただそれだけの理由でジャンニに対する思いがひっくり返ってしまった。
ジャンニを口汚く罵り、ニーノを監禁し、拷問に近い取り調べのような感じでニーノに対して問いただすんだ。
「お前は知っていたのか!?」って。
その剣幕に押されてニーノは「知らなかった」と答えてしまう。
「そんなクソ野郎だと知っていたら、僕はアイツに近づかなかった!」ってね。
バレれば酷い目にあってしまうかもしれない中で、それでも自分の信念や思いを貫ける人なんてのは本当にごく一部なんだよな。
痛みを葬るな、感じた喜びも忘れずに
『君の名前で僕を呼んで』だよね
あの映画の中でも「矯正施設施設に送られても仕方なかったのに~」みたいなセリフがあったけど、同じような時代(調べたら1983年でした)の、しかも同じイタリアを舞台にした作品だったね。
本当にあのお父さんは素晴らしい人だったよね。
ジャンニの母親のやニーノの父親があんな人だったら・・・
そしてその後、ジャンニはニーノの父親の兄とその仲間たちから白昼堂々襲撃され、酷い暴行を受ける。
周りのワルたちはただ眺めているだけ。
そんな中、果敢にもそれを止めたのは、ジャンニのことを口にしてしまったあの少女だった。
それもあったんだろうね。
でも、ひょっとしたらエリオのお父さんのような考えを持っていたのかもしれない、と少し思ったりもした。
そうそう、物語の中では唯一味方になる人もいた。
ニーノの遠い親戚みたいな人なのかなあ?
ちょっとよくわからなかったんだけど、ニーノの家の敷地内のトレーラーハウス?でアメリカ人たちと暮らす男がいたんだけど、ジャンニのことをバラされて意気消沈するニーノに声をかけるんだ。
「あいつらは俺のことを何も知らない。俺があの中で何をしているか知らないだろ?」って。
そして「秘め事にすれば100年だって続けられる」
その言葉に勇気づけられたニーノはジャンニに会いに行くんだ。
そうだね。
別におおっぴらにする必要はないと思うけど、隠さなきゃいけないのも本当は違うよね。
そんな感じで結末に向かうんだけど、最後の最後に事が起こり、そこでわたしは思い出すんだけど、わかっていたこととはいえやっぱりすごくショックだった。
悔しかった。
ジャンニの母親やニーノの父親は、事が起こった後に何を思ったんだろうね。
悲しんだのかな?
しょうがないと思ったのかな?
昔一度観てすごくショックだった『ボーイズ・ドント・クライ』もそうだったけど、やっぱりこういう実話を元にした話は観ていて辛いな・・・
そしてこの事件をきっかけに今日まで続く同性愛者たちの支援団体が設立されることになる。
悲劇的な事件をきっかけに、世の中を変えるための動きが起こるのは正しいことだと思う。
『明日の少女』
※同性愛者ではなく技能実習生の闇を描いた作品です
なんかでもそうだったけどさ
でも、本当は悲劇的な事件をきっかけにせずとも世の中はよい方向に変わっていかなきゃいけないんだよね。
まだ始まったばかりなので観れる機会は多いと思います。
長閑なシチリア島を舞台に描かれる、ただひたすらに美しく、そして残酷な物語
もし気になったならぜひ一度観てみてください。
響く人には響くと思います。
それでは
今日も来てくれてありがとう♡
バイバイ!またね♡
Salut(サリュ)♡