『月』
基本的にいつも概要はもちろん、あらすじもわたしが適当に書いています。
が、あまり個人的な思いのようなものを混ぜたくないので、今回はオフィシャルからの添付となります。
深い森の奥にある重度障害者施設。
ここで新しく働くことになった堂島洋子は“書けなくなった”元・有名作家だ。
彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平と、ふたりで慎ましい暮らしを営んでいる。
洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにするが、それを訴えても聞き入れてはもらえない。
そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだった。
彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく――。
ここから本編
重い。
だけど観終わった後、まだ余裕があった。
そんな感じでした。
今年は強烈に印象に残る重い作品がいくつかありました。
ただ、この辺の作品はわたしの個人的な要因による部分も大きかった、という部分もあるのではないかと思います。
そしてそういった作品は、重い、重くないに関わらず他にもいくつかありました。
わたしにとっては遠い話にも関わらず、観終わった後のしんどさは段違いで、やっぱりとんでもない作品だったんだな・・・と、改めて思います。
そして今作はというと、ご存知のとおり、とある障害者施設で元職員の男が19名の入所者を惨殺した事件をベースにした同名小説を原作とする作品で、当然非常に重い作品になります。
原作との差異がどの程度あるのか分かりませんが、どうやらかなり異なる作品のようです。
で、映画の物語ですが、数年前に幼い子どもを亡くした堂島夫婦の物語を組み込まれています。
この堂島夫婦の物語自体もとても良く、それ一つでひとつの映画になってしまうようなもの。
でもそれが組み込まれたことで、互いが互いの邪魔をしあってしまって物語が相殺されているような気がしてしまいました。
そこにほんのりと3.11の話なんかもほんのりと交えてしまった。
何かもったいないと思ったし、逃げのようにも感じてしまいました。
個人的には施設での話のみで、さとくんを軸にしつつさとくんと洋子さんに絞って、2人の対比や心境の変化、施設の状況をもっと丁寧に、淡々としてでも描いてほしかった。
それに何だかさとくんは、端から危険な人物のように描かれていたように感じてしまったんだよね。
本当にそうだったのか、次第にそうなっていったのか、そもそも現実の犯人はどうだったのかは分からないけど。
割と序盤で、さとくんがクラブで恋人と陽子さんの3人で飲んでいる場面。
陽子さんが鬱憤を吐き出しながら、自分の抱える闇の一端を見せているようでいながら、何だかそれを聞いていたさとくんの方にわたしは違和感を感じた。
そもそも最初は、照明も相まってか同一人物には見えなかったし。
それは、さとくんが事件を起こすことを知っているからかもしれなかったけど。
でも、何かおかしかった。
その後はより露骨で、紙芝居を披露していたときも
地獄の飲み会、堂島邸でも
明らかにさとくんは危険な人間であると言っているかのように観えてしまった・・・
結局のところ、端からそういう資質のあった人間が事件を起こしてしまったと、矮小化させているような気すらしてしまった。
そこが残念だったかな。
あくまでもわたしがそう感じただけだから真意はわからないし、そう感じたことがわたし自身の歪みなのかもしれないけどね。
それから、堂島夫婦の話はまた別の形で観たかったな、とも思います。
本当は堂島夫婦の話も書くつもりだった、というかこっちではその話をするつもりだったけど、子どもが欲しいと思ったことのない人間が書いたところで何にもならないし、わたしの言葉では残念ながら全然正しく伝えられないし、伝わらない。
だから、やめておきます。
やっぱり最後にこれだけ言わせてください。
さとくんには彼女がいて、彼女は耳が聴こえないんだけど、クラブで飲んでいるときに陽子さんの愚痴を聞いて、陽子さんを励ますんだよね。
それに対して陽子さんは
って聞いたら、
聴こえなくても分かるよ
というような返事をします。
で、この彼女はさとくんが変わっていくことに不安を感じていたんだよね。
そして事件当日の朝、さとくんを心配していた彼女はそのことを告げるんだけど、さとくんは彼女を抱きしめて、彼女の耳元で
と、告げます。
でも、彼女にはそれは伝わらなくて、そのまま彼女は仕事に向かいます-
相手は人間なんだから 口に出さなきゃわかり合えない
これは日食なつこさんの『跳躍』という歌詞の一説で、それはそのとおりだと思う。
でも、口に出したことで争いや対立が起こる可能性はあるし、そもそも口にしても、どれだけ叫んでも伝わらないときは伝わらない。
それは相手に聞く気がないからかもしれないし、自分が諦めているからかもしれない。
そもそも正しく伝わらないことだってある。
聞こえているけど聞こえていないふりをしている可能性もある。
色んな場所で、色んな場面で、伝わらず、理解されず、誤解され、無視される声、叫び、思い。
きっと、この映画には色んな声や叫びや重いが込められていたんだと思います。
そして、現実もきっとそうだった。
それを分かりやすく描きたかったのかな・・・と思う一方で、このやり方はズルいとも思えて、とてももやもやしてしまった。
何だかいちゃもんをつけているだけのように感じるかもしれませんが、そんなつもりはありません。
どんなに大きな事件が起ころうとも自分に直接関係ないことであれば、人は簡単に忘れていき、あっという間に風化してしまう。
時にはその過程で、意図的に歪められてしまうこともあると思います。
絶対に忘れてはいけないものを思い出させる、突きつけるという意味でも、価値のある作品だと思います。
ただ、わたしは残念に感じる部分があったのも事実というだけで。
とはいえ、役者さんたちの演技は本当に素晴らしいですし、観終わった後に自分なりに色々と考えることもできると思います。
機会があれば、ぜひご覧になってみてください。
それでは
今日も来てくれてありがとう♡
バイバイ!またね♡
次回予告
そして意地悪なおじいさんに殺されたシロは・・・
最凶の悪魔となって復活だ!!
※事情により予定を変更する場合があります。