まえがき
なんかアマプラで『ちょっと思い出しただけ』という映画が配信されていますね。
この映画は以前観た『ナイト・オン・ザ・プラネット』という映画の日本版みたいな作品なのかな?
あの映画めっちゃよかったよなー、ということでこちらも気になっています。
ちなみに、今回のお話とは全然関係ありませんw
そもそもまだ観ていないしね。
ただ、タイトルにあやかって、ちょっと思い出したことを書いてみようかなと思います。
これはとあるおばさんの過ぎ去りし少女時代子どもの頃のお話…
ではなくて、確か4、5年前のお話になります。
一人の屋敷女の誕生に少しだけ関わるお話
スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う!
なんて名言がありますが、現実においてはどうなんでしょうね?
同じ属性の人は自然とひかれ合うものなのでしょうか?
少なくとも、わたしのまわりには同じ属性というか、同じ呪いを抱えた人はいませんでした。
気づかなかっただけかもしれないけど。
4、5年前のこと。
その日、会社の行きたくもない飲み会が終わり、やっと帰れる!と思ったら2軒目に連行されました。
正確にはわたしの仲のいい人が連行されそうになって、助けを求められたのでついていった感じですが。
で、とある飲み屋に入って、直属ではない上司から愚痴を聞かされたり、その上司が他の子に説教じみたことをするのをわたしは適当に相槌を打ちながら聞き流していました。
さすがにそこにいるのがキツくなってきたわたしは、タバコを吸いに行くという口実で、少しの間外に出ることにしました。
で、店の前の喫煙スペースでタバコに火をつけたら、ちょうど一人の女性が同じくタバコを吸いに出てきました。
ただ、その女性は正確には女性ではありませんでした。
わたしたちの席のすぐ側には3人組の女性がいたのですが、そのうちの一人は失礼な話、誰もが見た目でニューハーフに違いないと思うのではないかというような人でした。
いや、今考えると女装した人だったのかもしれませんが。
その存在に気づいた上司は、やたらと馬鹿にしていました。
ただ他の2人は女性にしか見えなかったと思います。
外に出てきた人は女性にしか見えなかった2人のうちの一人で、ライターを中に忘れてきたのか、わたしに火を貸してほしいと言ってきました。
その声を聞いて(ああ、この人もそうなんだ)と内心とても驚いたのを覚えています。
わたしはどうぞ、彼女のタバコに火をつけたところ、彼女は感謝しつつ、他愛もない話をしてきました。
そして少し話した後、わたしの顔を見ながら唐突に聞いてきたんです。
「ホルモンやってるの?」
わたしは何のことか分からなくて「え?」と聞き返しました。
すると今度は
「女性ホルモン打ってるでしょ?」
と言ったんです。
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったし、当時はまだ何もあれこれしていませんでした。
だから、そう言われたわたしはおそらく動揺していたと思います。
ただ「やってないですよ」と苦笑いして答えるのが精一杯でした。
その当時のわたしは、服装こそどちらかというと中性的だったとはいえ、まだあれこれしていないのはおろか、髪すら短かったです。
顔もどちらかというと女顔、と言われることはありましたが、わたしはがっつり男顔だと今でも思っていますし、女性に間違えられるようなことも当然まだありませんでした。
それに対して彼女は
「え?もったいない。“こっちの人”なのに。なんでやらないの?」
と言いました。
今思えば見ず知らず他人に、よくもまあそんなこと言えたよなw
ただ、この少し前にわたしはね、恥ずかしい話ですけど女装体験みたいなのに行ったんだよね。
もし、女性だったらどんな姿だったのか気になってさ。
結果的には絶望するんだけど、このときのわたしは誰にも言わなかったその話を、何故か見ず知らずの彼女に話していました。
「ぼくなんて、絶対無理ですよ」と締めくくって。
「ほんとにぃ?」
と笑いながら彼女は言いました。
「でも、“こっちの人”なのはそうなんでしょ?だったら絶対やったほうがいいよ。もったいないよ。絶対きれいになれるって」
不思議なもので、このときわたしは“こっちの人”ということを否定しませんでした。
それは当時お付き合いをしていた人にしか言わなかったこと。
最終的には理解してもらえなかったこと。
今でも本当は、誰にも分かってもらえないこと。
オ○マだとかホ○だとか言われることはあったけど、誰も気づかなかったこと。
わたし自身もそうではないと、必死に否定し続けていたこと。
そして、目を逸らし続けていたこと。
逃げ続けていたこと。
それを偶然会った、名前も知らない見ず知らずの他人に見透かされるとは思いもしませんでした。
そしてそれは、今に至るまで最初で最後のことです。
その後彼女はお礼を言って店の中に戻り、わたしもすぐ戻りました。
上司が遅ぇよ!と言い、わたしにぐだぐだ文句を言い出しましたが、わたしは完全に上の空でした。
あのとき、なぜ彼女に見透かされたのかはわかりません。
ひょっしたら、酔った勢いで適当なことを言っていただけかもしれません。
それっぽい人なら誰に対しても言っているのかもしれません。
でもその言葉はわたしの中で、火種だか残り火となり留まり続けます。
それから数年後に迎えた開戦前夜。
わたしは“こっちの人”としてあるべき姿に戻ることを決意します。
いや正確には、このときはまだ100%男性ではないという確信しかなく、男性ではない何かになろうとしたというのが本当のところでした。
とはいえ、その数ヶ月後にわたしは自分が女性だったということを確信することになるので、彼女の言葉は正しかったわけですが。
そして、悩みに悩んで決意したとき、最後に浮かんだのは彼女の言葉でした。
それは最後の一押になった言葉。
たとえそれがでまかせの言葉だったとしても。
正直、正しかったのか間違ってたのかなんて、今でもわかんないよ。
それまでずっと目を逸らし、逃げ続けていた呪いに向き合わなければならなくなった現状。
きっとわたしはこの呪いと向き合い続けられるほど強くはない。
耐えられなくていつか狂うのかもしれない。
ひょっとしたら、もうすでに狂っているのかもしれない。
だけどね…
まだまだ発展途上のひよこみたいなもんだけど、“こっちの人”になって思うのは、やっぱりキツいことや苦しいことばかりなんだよ。
でも、同時に楽しかったことや嬉しかったこともある。
思うところは色々あるけど、わたしはあるべき姿に戻れてよかった。
理想には程遠いし“女性”として生きていくことは多分最後までできないけど、それでもどうせ惨めに死んでいくぐらいなら、
今の方が断然いい。
あの日出会った名も知らない貴女。
わたしは変わったよ。
ううん、違う。
戻れたよ。
思うこと
敵意や憎悪を向けてくる奴ら。
建前ばかりで、本当はわたしのような存在を拒絶したい連中。
理解に苦しむ理屈を並べ立てて、足を引っ張る奴ら。
あわよくば利用してやろうとする連中。
みんなまとめて、いくらでも頭の中で中指立ててやるよ。
頭の中で裁ち鋏を突き立てて、切り裂いてやるよ。
こちとら伊達や酔狂で屋敷女を謳っちゃいないぜ!
これは、誰にも言ったことのないお話。
どうでもよくて、しょうもなくて、下らないお話。
でも、わたしにとっては最初で最後の大切なお話。
一人の屋敷女の誕生に少しだけ関わるお話。
そんなお話をタバコに火をつけながら、
ちょっと思い出しただけ。
てか、咳喘息持ちがタバコなんか吸うんじゃねえよw
って感じですがw
そして何より…
スタンド使いの話、関係なくねw
こんなしょうもない長文を
最後まで読んでいただいてありがとうございました♡
あなたに最大級の幸あれ♡
次回は多分何か映画のお話になります♡