7月。私、伊東性則は去年より約2週間遅く梅雨明けした沖縄にいる。
コロナ禍による緊急事態宣言が延長された沖縄に来たのは、念願叶って遂にあのかっぱ三郎にインタビュー許可が下りたのだ。
しかしこの時期に沖縄へ行っていいのか?彼のマネージャーでもあるジョンに相談してみた。
「松雪泰子の事なら心配ない。」との返事が。
多分、緊急事態宣言を熱血!新入社員宣言と間違っている気がするのだが・・・。
悩んでいてもしょうがないので、インタビュー場所に指定された靴流通センターへ向かった。そこに彼はいた。
―――初めまして。この本は我々が編集や発行をしている雑誌です。(バーン今月号を渡す。)
かっぱ三郎(以下k):ハロウィンじゃないか!ジャーマンメタルの雄だね!しかし残念ながら私はガンマレイ派なんだ。
―――この雑誌を知っていましたか?
k:もちろん知っているよ!喜国雅彦のROCKOMANGA!は最高だね!
その他は残念ながら、ちょっとナイーブな感情になるんだ・・・。
すまない。ジョン、この雑誌を持って行ってくれ・・・。
―――(コイツ6コマ漫画だけ読んでたんちゃうんか・・。多分立ち読みだな・・。)
k:時を戻そう。
―――え?あ、ああ。あなたが2021年3月頃にギターを買ったと聞きました。
k:あぁ!?ああ、ショップに冷やかしに行ったらとてもクールなギターがあったんだ。
いつもなら「ああギブソン。はいはい。」ってスルーするんだが、今回は何故かすぐ店員を呼んで試奏したよ。
というか、そうしないといけないと感じたんだ。
―――何か不思議な縁を感じたんですね。
k:えぇ?ああ、縁ね。まず一つはカラーだろうね。ワインカラーなんて沖縄ではまず見当たらない。
恐らく米軍が何らかの圧力をかけているんだろう。
―――(米軍の圧力・・・?)
k:後、状態がすごくイイんだ。フレットも減ってないし金属パーツにクスミもない。
店員によると「前の持ち主は新品で買ったけど、気が向いたら少し弾く程度だったので、ほぼインテリア状態だったらしい。」と言っていたよ。
それなのにボリュームポットとコンデンサは換えられていたけどね(苦笑)
―――あまり弾かないのにパーツは交換されていたんですね。
k:あぁ?あ、あぁそうだ。箱入り娘の下着が赤ランジェリーにTバックだった時を思い出すね。(大爆笑)
―――(コイツ何言ってんだ・・・。)
k:で、このギターは1996年製なんだけど、そこに意味があるんだ。
―――1996年?
k:そう、1996年さ。その年は森且行がSMAPを脱退したんだ。しかし我らがアイドル桜樹ルイが復活したのも1996年なんだ。
終わりがあれば始まりもある。ソレを肌で感じたのが1996年なんだ。当時私は高校生だったけどね(笑)
―――人に歴史あり、ですね
k:はぁ?
―――(キレ気味に)人に歴史あり、ですね!!
k:(とても早口で)桜樹ルイ復活って驚いたよね~コンビニ行ってさAVいだてん情報とかオレンジ通信とかあとえ~と・・・グレース!グレースだ!いろんなAV情報誌を買って情報集めようとしたのよそしたらオレ学ランでさ!コンビニの店員が「学生には売れませんよ。」とか言うのよ!あん時まいったよね~タバコとか酒は売るのにエロ本売らないって性の嫌がらせだよねコレもセクハラなんじゃないのってさ~で、何の話だっけ?
―――(冷静に)あなたの買ったギターが1996年製だったって話ですよ。
k:あぁ、そうだったね(苦笑)。実はピックアップを換えてあるんだ。ガンズのスラッシュモデルをリアとフロント両方に付けてるよ。
まぁガンズはスラッシュよりイジーが好きだけどね。
―――ブログのアイコンもイジーでしたよね?
k:ああそうだ。アレってお前本人か?と聞いてくるフォロアーがたまにいるんだけど、私じゃないけど私です。と伝えているよ。
でも恐らく・・・いや、絶対に私では無いと確信しているハズなんだ。でも敢えてそれを言わないでいてくれるよ。
―――フォロワーとの信頼関係で成り立っているんですね。
k:いや・・というより、可哀そうなオジサンと思っているんだろう。
―――・・・・・・。で、ピックアップを換えてみてどうですか?
k:昔2ちゃんねるのダンカンのスレでこのピックアップをレビューしてた輩がいたんだけど
ベルベットのカーテンの奥に消え入る様な、とかワケ分からん事言って袋叩きにあってたのを思い出したよ。
もしかしたらそういう感じかもね(笑)
―――で、実際は?
k:残念ながら私の部屋のカーテンはニトリの遮光カーテンなんだ。(と、ここでジョンが来てなにやら耳打ちしている)
―――どうかしましたか?
k:いや、さっき君から貰った雑誌がたった今メルカリで売れたみたいなんだ。これから出品作業があるので失礼するよ。
―――(マジかコイツ・・。)ありがとうございました。
彼とのインタビュー中に何度か聞き返されたりイラッとする瞬間も多々あったが、そんな時でも彼の目は真っすぐ前を向いて語ってくれていた。そこには確かに都会のサクセスストーリーが存在していた。 ■■