たいていの人は
芥川龍之介さんの作品の二、三作は知っている。
しかし「雛(ひな)」を知っている人は意外と少ない。
私からすると「トロッコ」「蜜柑」「魔術師」、
或いは「河童」や「杜子春」などと同様、名作だと思っている。
作品によっては古典に拠する作品や時代物、
文明開花を扱った物、フィクション物などに分類されるが、
「雛」は開花物と分類されている。
(写真:ウィキペディアより拝借)
老婆の語りの形式で話は進んでいくのだが、
芥川龍之介が開化に象徴される明治という時代を、どのようにとらえていたのかを如実に示している作品だと思う。
新しいものがどんどん入ってくる中で、一家の心を宿しているひな人形・・・
それを実益のない古臭いもの・・・旧弊として扱われることに強烈な疑問を投げかけている。
一種、芥川の文明批判といえるかもしれない。
雛は女の子の象徴でもある。
語り始める老女鶴の幼いころ、
開化人間である兄英吉に精一杯の抵抗を続ける少女お鶴がいじらしくてならない。
じっと耐えに耐えるお鶴は、
この作品を通して何を言いたいのか・・・
この舞台の見所である。