「ワークショップをやってます」
「専門学校に通っています」
タレント養成所に・・・声優学校に・・・
俳優の勉強場所として選ぶところはたくさんあるようだ。
俳優の勉強って何だろうか。
発声訓練やダンスレッスン、
殺陣やフェンシングなどのレッスンだろうか。
他に、身体訓練としての運動・・・
だが、演劇の歴史や映画・テレビの歴史、
演技の理論形成を入れる場合もある。
スタニスラフスキーのシステムや、
リー・ストラスバーグのメソッドなど、
身体訓練とあわせて理論を学ぶ方法もある。
ぼくは劇団の俳優教室に入った。
「こんな勉強しても舞台に立っても役には立たないよ」
「俺たちは俳優の勉強をしに来ているのに・・・」
等と不平不満がささやかれていた。
講座の内容は、
木下順二氏の「戯曲論」、南博氏の「心理学」、
浜村米蔵氏の「演劇史」、野口三千代氏の「体操」
増井何某氏の「発声訓練」、何某氏の「社会科学」などであった。
一日8時間の座学だった。
大劇団である。
無駄なことをやらせるわけはない。
これぞ正統派の俳優教室だと思っていた。
ある日、教室の校長、宇野重吉氏は、
これは俳優の勉強じゃない。
この授業から何を学ぶかじゃなくて、
この授業を受けて、何を学ぶかを見つけることだと言う。
つまり、これを勉強すれば俳優になれるなどいうような、
特効薬はないということだった。
うちは大劇団とは程遠いちっぽけな集団だが、
私の演出は、この宇野さんの教えを活かしているつもりだ。
稽古場も、質的には養成所と同じだ。
稽古ですべてを学ぶなんてできるわけがない。
稽古を通して感じたことで、何を学ぶかに気づくことだろう。
周囲を見渡すと、タレント養成所だのが乱立している。
あこぎなところも多いらしいが、
将来のあるチャレンジャーからボったくる等、
彼らを金儲けのターゲットにはして欲しくない。