「演技の上手くなるコツ」って何ですか
・・・と聞かれました。
世間話のついでに聞かれて、
ついでに答えるような話ではないので
近くにある喫茶店に入った。
「どのくらい演劇をしていますか?」
「10年くらいです」
「どんなお芝居をしているんですか?」
「まぁ、どんなって、決まっていないです。
お互い楽しくやろうという気持ちで、
思いをぶつけ合うので結構激しいですよ」
「ほう?」
何となくぼくの性に合いそうにないように感じます。
「演技が上手くなるコツがあるとすれば、
いい演出家につくことが一番かなァ」
いささか抽象的な答えかもしれないが、
本当はそれ以前の自己形成が最大の課題だが、
この話をするには時間が必要なので、
ぼくの考えだが・・・と前置きして、
「本当はコツなんてないと思います」
と言いました。
「スタニスラフスキーでしょうか」
「ほう、勉強しているんですか?」
スタニスラフスキーの名前がすんなり口から出るようなら、「上手くなるコツ」なんて聞いてくること自体おかしなことです。
「さあ、スタニスラフスキーを勉強すれば演技が上手くなるとは限らないでしょう」
”〈自称〉パーフェクトに身につけた”俳優を何人も見てきたが、どうしようもない「俳優」はたくさんいます。
リー・ストラスバーグのアクターズスタジオで学び世界中の人々を唸らせた俳優もたくさんいます。
マーロン・ブランド、ダスティン・ホフマン、ロバート・デニーロ、アル・パチーノ・・・等々。
とはいえ、世界は広い。ローレンス・オリビェのようなアンチスタニスラフスキーもいます。
アンソニー・ホプキンスもそうだという記述もありました。
「しました。でも、あれ、難しいですよね」
「ぼくには、ぼくはこう思うとしか言えませんが・・・」
と前置きして、
日常普段の生活を丁寧に生きること。
身の回りにあるものに目が行き心寄せられる感性を養うこと。
いい作品に出会える環境に身をおくこと。
いい指導者に出会うこと。
・・・このすべてではないかという話をしました。
俳優としての勉強以前の「生き方」こそ大切かと・・・
これには、少なくても「コツ」はないと思うのです。