ぼくは本来役者だと思っています。
演出なんて柄じゃない・・・劇団で演出をしながら、
実際に、自分の脳内で行きつ戻りつしている考えです。
劇団に僅かの人を除いて役者といえる人が何人いるか・・・
こんなことを考えざるを得ないのは悲しいことです。
しかし、大劇団といわれる劇団を見ても、
これは全く変わりはありません。
テレビなどに出演していれば自分を役者として
名実共に認められたように考える人もいます。
「だったら、それのできる所に行って出ろよ」
そう言いたくなります。
うちの劇団には、
まだスタート間もない俳優女優が多くいます。
いま深刻なテーマを持つ作品の稽古に入っています。
その中の役を演じる80%がこの役者たちです。
立ち稽古に入りました。
「どう演じようか・・・」
真剣に考えてきているのだろうと思います。
しかし難しい。
日常生活で、人として生きているはずの彼等が、
稽古で役の人物を演じると、
「人」であることを放棄するのです。
何故だろうか?
ぼくは何もいいません。
「何も言われないから、これでいい」
と思っているとすれば大間違いで、
そんあ風に思われては困るのです。
まず、人として感じて欲しい。
人としてしゃべって欲しい。
人として動いてほしい。
それからが役者と演出の関係が生まれてくるからです。
「台本の活字を読むな」
しつこく言ってもなかなか活字から抜け出せない・・・
「はい」
「えっ?」
という一言も、
何に対して、何を感じ、何を思ったから、どうしたいと思って、
「はい」なのか「えっ?」なのか・・・
「役者の仕事って大変なもんなんですね」
とおっしゃる方もおありでしょうが、
「演出の仕事って、もっと大変な仕事なんですね」
だからでしょうか・・・
「演出です」とはなかなか言いにくいのです。