不況の影響はかなりのもののようだ。
・・・などと、
他人ごと風な言い方では済まされない。
ぼくは舞台と司会、CM出演などの
表現することを仕事としてきているが、
同じような仲間が、
かつては10名以上はいた。
しかし、
タクシーのドライバーになったので、
芝居からは身をひくと連絡があったり、
或いは、妻子を養えないので、
引退して故郷に帰るとか、
父の工場が倒産したので、
実家に呼び戻された・・・等々。
演劇の世界から去っていった友人がいる。
それを聞いていたぼくも、
いつまでもこのままは行かないだろう。
男子(・・とは限らないが)志しを立て郷関をいず
こと為さずんば死すとも帰らず
至るところに青山あり・・・
この道に生きようとした仲間の殆どは
少なからず、同じような志しを持っていたはずだ。
それが、志半ばで、
一人、また一人と去っていく。
このような時代だからこそ、
君のその存在が必要なのだ・・・
と、言い切れない辛さがある。
同時に、「お前だって分からないぞ」
という声が聞こえる。
実は、たまたまご機嫌伺いで
電話した友人が、
「おれ、来週から東京を離れるよ」
と言った。
(虫の知らせだったのかもしれない)
仕事がなくて生活が底をつき、
奥さんが実家に帰ってしまったそうだ。
そこで奥さんの実家の仕事(漁業)を
手伝うことにしたのだという。
「おれ、船酔いするから大変だが・・・」
彼等がいなくなっても、
世の中は変わらない・・・
と言う向きがあるかもしれない。
しかし、違う。
派手には見えないし・・・
細々とかもしれないが、
人と人との心をつないでいた糸の一本が、
プツン・・・と切れることを意味しないか・・・?
数本の糸が縒れあっていたものが、
解れて・・・一本、一本と切れていく。
「・・・さあ、お前、どうする」
・・・という声が、段々大きくなってくる。