「朗読をやりたい」
声がかかった。
「いいよ」
・・・と返事をしようとすると、
「お芝居は大変だと思って」
・・・という。
「大変って、何が?」
う~ん、セリフを覚えなきゃならないし、
動かなけりゃいけないし・・・
これが理由で朗読にしたい
ということであれば、
いささか考え違いをしていないか。
朗読だと本を手許におけるし、
相手役もなければ、
自分の思いで構わないと
思っているとすれば
発想自体に問題がある。
本当は、
ぼくは朗読は好きではない
・・・という以上に嫌いなのだ。
そりゃ、金はかからないし、
適当なスペースがあれば、
照明も音響も芝居ほどではない。
加えて、台本も見ながらできるという
安易な考えでは付き合いたくない。
こんな話をして別れたのが、
先週末だった。
その彼女から電話が来た。
「どうしてもやりたい」
と言う。
「自分の考えの甘さがあった」
その上で、考えを改めて、
真剣に取り組みたいという。
「考えさせてくれ」
とだけ言っておいた。