三浦綾子昇天10年・・・5 | 演劇人生

演劇人生

今日を生きる!

もう一人、制作をやってもらえる人物に、

K氏を挙げた。

すると彼は、

友人のTくんを入れて欲しいと言い出した。

有吉さんは、その決定権をぼくに委ねた。

「伊藤くんに聞いて」

「Tはぼくもしっているし、いいんじゃない?」

これには有吉さんも不思議そうな表情だった。

「伊藤くん、自分の役がダブルキャストになるわよ」

「いいです」

「あなたも人がいいわね」

ぼくの希望する役は、トーマス・ルイスだった。

が、初めから自分の役だとは思っていない。

役がなくなっても、この芝居が出来ればいい。

これが正直な、ぼくの気持だった。


紀伊国屋ホールを一週間キープした。

野沢那智くんの自宅兼稽古場の薔薇座を借りることにした。


民藝という大劇団で芝居をしているつもりだったが、

実際は太陽の恵みや水を与えられて、

ただただ舞台に立っていただけだったことを知らされたのも、

この時だった。


おれは芝居をしていたなんて

おこがましくて言えない自分だった。
劇団生活
有吉さんという著名な作家のおかげで、

「何とかなるだろう」


・・・と、安易な気持から始めた芝居だったが、

本当に何とかなりそうな・・・

いや、とてつもない参加者を集めて、

新劇界始まって以来の舞台になり始めたのだった。


彼女はカトリックのクリスチャンで、

洗礼名はマリア・マグドリア(・・・だったと思う)だった。

(続く)