美味しい季節 | 演劇人生

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ミカンの中の皮むく? 白いところどうする? ブログネタ:ミカンの中の皮むく? 白いところどうする? 参加中
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蜜柑の美味しい季節・・・
コタツに入り
テレビを見ながら
ポイッ・・・と口に含む蜜柑・・・

これは人生の贅沢な瞬間だ

ぼくが蜜柑を最初に食べたのは
忘れもしない中学2年生の冬だった
絵や写真では知っていたが・・・

山形から埼玉に引越しをして来た年の冬である
さくらんぼ、林檎、葡萄、洋梨(ラ・フランス)等々
果物の多い山形に過ごしていたが蜜柑は食べたことがない

「こんな美味しい果物があるのだろうか」
と思った日のこと・・・

母と妹と一緒にコタツに入り
仕事から帰ってくる父を待っていた

父は帰るなり紙袋を食卓に乗せた
「蜜柑だ」
そういうなり父は風呂に行ってしまった

「蜜柑?」
母は食べたことがあるらしいが
ぼくと妹は実物を見るのも初めてだった

皮をむくのも初めてで、
母に習って
白い筋を取り頬張った
「甘いね!」
「美味しいね!」
こんな言葉が飛び交ったのを覚えている

それから数十年を経て
遊びに来た友人が
表の皮ごと
饅頭を食べるようにちぎっては口に入れるのを見て
ビックリしたことがある

友人は
「この皮には実以上に栄養があるんだ」
と言った

白い筋も同じで
がんを予防する効果もあるんだ・・・

こんな話を聞いてからというもの
ぼくは白い筋までは食べるようになった
表面の皮をむいて
袋を2、3口に放りこむ

一時期
ワックスを塗って見栄えをよくしていたのを知っていたので
表の皮まで食べないが
チンピという漢方薬は蜜柑の皮だし
きっと身体にいいのだと思う

また蜜柑を語るに避けて通れない思いがある

芥川龍之介の短編小説の「蜜柑」を読むと
小さな蜜柑の実から
もう一つの味を楽しめる

奉公に行く姉が
送りに来ている弟達に
走る列車の窓から
投げてやるのが蜜柑なのである

貧しい暮らしの中
つらい奉公に行く娘に
なけなしの家計から買い与えてくれた蜜柑なのだろうが・・・

「姉ちゃん!」
・・・と懸命に手を振る弟達めがけて
車窓から投げる姉の気持はどんなだろうと思う

貧しさの中に煌めく
心の豊かさを感じないわけにはいかない

こんにちは
春夏秋冬
いつでも蜜柑はある
・・・が
姉ちゃんが放り投げてくれた蜜柑を
弟達は
どんな気持で食べたろうか
・・・これを考える時
彼等も
皮ごと
ひと噛みごとに甘味と美味しさと
姉の優しさを味わいながら・・・
若しかすると
涙をためながら食べたのではなかろうか・・・

こんな思いをさせられる

貧しい中にも豊かな心の味わいが
そこにはあったように思えてならない

このような思いに浸りながら食べる蜜柑

白い筋まで剥きとっては食べられない
ほんとうは丸ごと食べながら

ちっちゃな手でちぎって食べた
弟達の思いを感じ取りたい思いに駆られるのである得意げ音譜