爆弾処理班【その1】 | 演劇人生

演劇人生

今日を生きる!

婚礼は、おめでとうだけの世界でない。


こんなことは、

誰にでも分かっているはずだが、

様々なクスブリが、


笑顔の陰に隠されてしまうのも

婚礼の特徴である。

これを知らないと、

大変な目に合うこともある。


以前あるホテルで、

僕が、

爆弾処理班などと呼ばれたこともあった。


難しいお客様の披露宴司会に指名される。


親に反対されているカップルがあると、

予定通り婚礼が出来るようにしなければならない。

衣裳が合う合わないで機嫌が悪い。

試食の時間が合わずに、ごねている。

対応が遅れたら機嫌を損ねた。
・・・等々。


「そんなことは司会者の仕事ではない」

と断わることも何回もあった。

だが、「何とか頼むよ」

と言われると引き受けてしまう。


最近は、問題が沢山あったホテルとも離れ、

司会者としての仕事に集中していたが、
ここのところ、

またまた難しいお客様に出会った。

例として書くには慎重さを有するが、

このようなケースに出会うかもしれない人のために

2~3の例を挙げてみよう。


例1.打合せのために席に座った途端に、
     『
こんなホテルに決めたのは間違いだった。

担当者は全員病院送り』
       
聞こえよがしに大声でわめきたてるお客様。
    
「そうですか。お気に召さなかったことがありましたか?」
   『全部よ、全部。司会者は大丈夫でしょうね』
    
「このホテル全部がお気に召さないようでは

司会者もどんなものでしょうか」

このような会話が飛び交う打ち合わせで、

当日のプログラムとして、

ノートの切れ端に主賓の肩書きと名前を書いたものが一枚、

ポイとテーブル上に投げ出される。

   「・・・」(ムッとするが顔には出さない…僕ベテラン司会者)

   「ほう・・・お父さんも、新郎もドクターですか?」

   「えッ・・・新婦もですか!」

   「お母様も・・・! はァ、これはすごいですね」

   「もうここまで来れば、ドクターストップですね」

   『は?』

   「いえ、つまらない駄洒落です」

この打合せでは新郎新婦には会わずじまい。

当日になって「初めまして」の挨拶を交わす披露宴は開闢以来。

現場スタッフの神経もピリピリしている。

「○○のお母さんに注意してサービスを」

本日の注意が交わされる。

●結果は、「最高の披露宴になったじゃない?」

「・・・だったら最初から、和やかに行こうよ!」

≪続く≫