婚礼は、おめでとうだけの世界でない。
こんなことは、
誰にでも分かっているはずだが、
様々なクスブリが、
笑顔の陰に隠されてしまうのも
婚礼の特徴である。
これを知らないと、
大変な目に合うこともある。
以前あるホテルで、
僕が、
爆弾処理班などと呼ばれたこともあった。
難しいお客様の披露宴司会に指名される。
親に反対されているカップルがあると、
予定通り婚礼が出来るようにしなければならない。
衣裳が合う合わないで機嫌が悪い。
試食の時間が合わずに、ごねている。
対応が遅れたら機嫌を損ねた。
・・・等々。
「そんなことは司会者の仕事ではない」
と断わることも何回もあった。
だが、「何とか頼むよ」
と言われると引き受けてしまう。
最近は、問題が沢山あったホテルとも離れ、
司会者としての仕事に集中していたが、
ここのところ、
またまた難しいお客様に出会った。
例として書くには慎重さを有するが、
このようなケースに出会うかもしれない人のために
2~3の例を挙げてみよう。
例1.打合せのために席に座った途端に、
『こんなホテルに決めたのは間違いだった。
担当者は全員病院送り』
聞こえよがしに大声でわめきたてるお客様。
「そうですか。お気に召さなかったことがありましたか?」
『全部よ、全部。司会者は大丈夫でしょうね』
「このホテル全部がお気に召さないようでは
司会者もどんなものでしょうか」
このような会話が飛び交う打ち合わせで、
当日のプログラムとして、
ノートの切れ端に主賓の肩書きと名前を書いたものが一枚、
ポイとテーブル上に投げ出される。
「・・・」(ムッとするが顔には出さない…僕ベテラン司会者)
「ほう・・・お父さんも、新郎もドクターですか?」
「えッ・・・新婦もですか!」
「お母様も・・・! はァ、これはすごいですね」
「もうここまで来れば、ドクターストップですね」
『は?』
「いえ、つまらない駄洒落です」
この打合せでは新郎新婦には会わずじまい。
当日になって「初めまして」の挨拶を交わす披露宴は開闢以来。
現場スタッフの神経もピリピリしている。
「○○のお母さんに注意してサービスを」
本日の注意が交わされる。
●結果は、「最高の披露宴になったじゃない?」
「・・・だったら最初から、和やかに行こうよ!」
≪続く≫