山から流れ下る清らかな小川に青々とした田んぼ、手が行き届いた畑。そして葦が茂る耕作放棄地。それらを杉やヒノキの植林が取り囲むこの谷戸は、多様な環境が複雑に連なる豊かな場所です。

猛暑日が続く真夏の休日。この谷戸で大汗をかきながらサシバの飛来を待っていると、農道脇の葦原から声が聞こえてきました。

「キョッ、キョッ、キョッ、キョッ……」

最初はゆっくり、そして次第にテンポを上げて響く、ヒクイナの声が。

この真夏の昼間に?と驚きつつ耳を澄ませていると、しばらく鳴き声が続いていました。

なんとか姿をとらえようと試みたものの、背高く密に茂った葦に視界を遮られ、なかなか見つけることができません。それでも久しぶりの出会いに気持ちが高ぶり、辛抱強く待っていると、葦原から顔を出したヒクイナが、狭い農道を「ひょいっ」と飛び越え、向かいの田んぼへと飛び移りました!

ずんぐりとした小さな体に、控えめな翼と大きめの足。お世辞にも飛ぶのが得意そうには見えない容姿ですが、遥か南の国から海を渡ってくる夏鳥です。

この小さな体で大海原を越えてきたのだと思うと、とても不思議で、愛おしく感じました。