この小さなバーのマスターは

ショウ。

そして手伝うのはニノ。

深夜、そのバーに

一人の男が現れた。

 

O「こんばんは」

 

S「いらっしゃい・・・。

よく来ますね。」

 

O「この前来たのは一週間も前だ・・・。

ショウに会いに来てるんじゃなくて

ニノに会いに来てるんだ。・・・ニノは?」

 

S「今ちょっと奥で休んでます。

気分が悪くなったって・・・・。」

 

O「また、思い出した・・・?」

 

S「はい・・・。

どういう加減で思い出すのか・・・。

同じ状況でも 大丈夫な時とそうでない時とが

あったりして・・・。

体調とか気分によるんですかね。

 

出所して廃人みたいだった頃より、今の方が・・・ね。

事件の時のニノは結構パニック状態で 刺した感触なんて

覚えてないかもしれないのに、頭の中で

勝手に作り出しちゃうんじゃないですかね・・・。」

 

O「・・・・。」

 

S「そんな心配そうな顔しなくて大丈夫ですよ。

俺、いつもそばにいられるんで。」

 

O「ショウがバーを始めていて良かったと思うよ。

相変わらず客が少ないけどね。」

 

S「平日のこの時間ですから。さっきまで

数人客はいましたよ。」

 

O「でも、静かで落ち着く。」

 

S「そうですね。この静かな雰囲気も

ニノにはいいと思います。」

 

O「騒がしくなくていい雰囲気だ。」

 

 

S「そういえば土曜日の夜相葉さんが来ましたよ。」

 

 

O「ああそう!もう相葉さんとも会ってるんだね。

ちゃんと話してた?」

 

S「ええ、少し前は絶対会わないって言ってたけど

会ってしまえばね・・・。まあ、俺が一番話してたかな。

ニノはまだ口数が少なくて。でも笑顔なんかも見せていましたよ。」

 

O「私に対する感じと一緒かな?」

 

S「いや、まだ相葉さんとの方が会話があったかもしれない。」

 

O「そうか・・。」

 

S「大野さんは嫌われてるんじゃないですか?ニノに。」

 

O「・・・かもな。」

 

S「やだなぁ。ジョークですよ。真に受けないでください。

ニノは大野さんの事が大好きですよ。

もう一杯飲みます?・・・あ、松本さん。」

 

 

木目がいい味を出しているバーのドアが開く。

紺のスーツを着た男性が

入ってきた。

 

 

M「こんばんは。

あれ?・・・・・大野さん?」

 

O「ああ、こんばんは。お久しぶりです。」

 

M「本当に久しぶり。この店にはよく来るんですか?」

 

O「ええ、月に2~3回は。」

 

S「松本さん。お久しぶりです。

ここの店は大野さんのおかげで成り立ってると言っていいほど

常連ですよ。」

 

O「松本さんもよく来られるんですか?」

 

M「いや、俺はごくたまに。ここで大野さんと会うのは

初めてですね。・・・二宮君は?」

 

S「今、奥で休んでいます。」

 

M「そう。彼は元気?」

 

S「はい元気ですよ。松本さんのおかげです。

時々、事件のことを思い出すみたいですけど。」

 

M「フラッシュバックか・・・。

カウンセリングとか受けてる?」

 

S「そこまでする必要もないかと。

彼の罪ですから・・・。」

 

M「そうか。そうだね。

ま、君がいれば大丈夫だろうし。」

 

S「はい・・・。こういうのは

時が解決してくれるのか・・・それとも

ずっと続くのか?」

 

M「きっと、一生続くよ・・・・・。

だから、君たちが支えるんだろ?」

 

S「彼が苦しみから解放されればいいと思ったけど・・・

そうですね。一生ささえます。」

 

O「私も・・・。」

 

M「あなたたちがいれば

きっと彼は大丈夫ですね。」

 

S「心から笑える日なんて・・・

もうないかもしれないけど、

それでもすこしでも暗闇から抜け出せるように

彼と一緒に歩いていきたいと思っています。

 

大野さん、松本さん、これからも

サポート、よろしくお願いします。」

 

 

深夜のバーで

三人の男性が

静かに酒を飲んでいた。

店の奥で休んでいる男の幸せを願いながら

 

 

 

                    おわり