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私はショウを頼りました。

ショウといると

悲しみや辛さが癒されました。

 

大野さんに一緒に住むのを断られて

悲しくて寂しくて

ショウに会いに行った時

なんだかほっとした・・・。

「今日の自分は大野さんの代わり。」

と言われた時は

そこまでして私を気遣ってくれることを

申し訳なく感じながら

少し嬉しかった。

 

その日

私ははじめてショウと寝ました。

抱かれながら

これは大野さんに抱かれているのか・・・

ショウに抱かれているのか・・・

混沌の中で抱かれたそれは

とてもとても

気持ちよくて・・・。

これは

ショウだ・・・

ショウだ・・・と確認しながら。

 

セックスって

こんなに・・・

気持ちいいものか・・・と

ショウのおかげで

知ることができました。

 

 

大野さんがダメなら

ショウで・・・

自分はなんて調子のいい奴なんだろう・・・と

思いながら

ショウのやさしさが

心に染みて

少しづつ少しづつ

ショウが私の中で大きくなっていきました。

 

ショウといると

大野さんを忘れる時間が増えてきました。

 

セックスだけでなく

ショウのやさしさに

ショウのすべてに

私は惹かれて

私は助けられたのです。

 

店で

大野さんに会う時

なんとなく気まずい気持ちになっていたのも

ショウのおかげで薄らいでいき

私の日常は

穏やかな時間が増えました。

 

 

この幸せな時間の裏で

あの女は

私が逃げて引っ越した新しい住所を

また突き止めていました。

この頃はもう

あの女はおかしくなっていたんだと思います。

 

私はもう一度引っ越しをしました。

そしてそこも知られてしまった時

 

ショウに一緒に住もうと誘われました。

大野さんの店も二人で辞めて

ショウは小さなバーを始め

私もそこで働くことになりました。

 

私は浮かれていました。

 

ショウと一緒に新しく借りた部屋は

ショウの一人暮らしの前の家と違って

間取りも余裕があり

二人で夜を過ごすための

大きベッドも買いました。

 

バーは

軌道に乗るまでは大変でしたが

ふたりで1から仕事を始める

楽しさと充実感と

少しずつ客が増えていく嬉しさと

自分がこんな経験ができるというのが

夢のようで

本当に幸せでした。

 

だから

あの女が

また私の前に現れた時も

ショウがいれば大丈夫と

タカをくくっていましたし

気が大きくなっていました。

 

本当に

今から思うと

なんと浅はかで傲慢な気持ちだったのでしょう。

大野さんの店も辞めたし

警察にでもどこでも

相談すればよかったんです。

 

・・・

いまさら

たらればを言ってもしょうがないですが・・・。

 

 

私が

あの女に

金を渡すでもなく

無視し続け

ショウとの仲を見せつけるように

あの女を見下した・・・。

 

あの女は

ショウがいなければ

私に相手をしてもらえるとでも

思ったんですかね・・・。

 

「お前がじゃまなんだよ」

 

そう言ってショウに襲い掛かりました。

手にナイフを持っていました。

 

ショウの服が

真っ赤に染まってきます。

ショウが後ろによろけて後ずさりしたのか

ショウとあの女の間が開きました。

あの女はもうい一度

ショウめがけて動きました。

早い動きではなかったです・・・。

私はショウと女の間に割って入り

 

女からナイフを奪って

 

刺しました。

 

女が崩れ落ちたのと同時位に

後ろで

ショウの倒れた音が聞こえました。

 

私はショウに駆け寄り

救急車を呼んだあと

ショウを抱きしめ

ただただ名前を呼ぶしか出来なかった・・・。

ショウの意識が

どんどん薄らいでいくのに

ただただ

名前を

呼ぶしか

出来ませんでした・・・。