うちの職場は対立する派閥がある。

 

松本派と

二宮派

 

松本さんは圧強めでぐいぐい行く感じだけど

なんたって美男子だから

これでコロッといく女性や男性が

何人もいる。

人ってちょっと強く言われたいって

願望があるのかな?って思うくらい

ぐいぐい顧客を取る。

 

一方

二宮さんはフレンドリーなタメ口で

気さくすぎて慣れ慣れしくて失礼なんじゃ・・・って

俺なんてハラハラしちゃうんだけど

なぜだかみんな最後には契約しちゃうんだよね・・・。

人って親しくされると

フトコロが緩くなるのかな。

ぐいぐい顧客を取る。

 

営業トップの二人に憧れる社員は大勢いて

いつの間にか

それが派閥になった。

 

もちろん

派閥に属さない人もいるわけで

俺もそれ。

 

だけど

 

松本さんと一緒に仕事をして

ノウハウを知りたいし

二宮さんと仕事をして

ノウハウを知りたい。

 

つまりどっちの派閥にも入りたいって言うのが

本音かな・・・。

 

だって俺は

しゃべりはそこそこいけてると思うし

客受けもいいんだけど

・・・・

なぜか成績につながらなくて

・・・・・

日々悶々としていた・・・。

 

そんなある日

「ケント、今日俺と一緒に行かない?」

松本さんが声をかけてくれた。

「え!あ・・・はい!」

突然の誘いに戸惑ってると

「きっと松本派への誘いですよ。」って

後輩が声をかけてきた。

二宮派の彼は

悔しいが俺より成績がいい・・・。

 

「今日はちょっと新規開拓するから。」

という松本さんより一歩下がって俺はついて行った。

すーっといい香りがする。

これが

できる男の香りなのか。

 

松本さんは必ずアポを取り

丁寧に説明を始める。

俺が知ってる圧強めの松本さんとはちょっと違う?

 

「今日は初めてだからね。」

松本さんが言う。

「ぐいぐい行くのはもう少ししてから」

俺は思っていたことを見透かされたようで

ちょっと恥ずかしかった。

 

松本さんは圧強めだけど

礼儀正しいしきちんとしているし

程度をわきまえている。

そういうところが信頼につながるのかもしれない・・・。

 

「お前・・・今悩んでる?」

不意に松本さんが言った。

返す言葉がなくて口ごもっていると

「成績がずっと下位に低迷してるじゃん、

ちょっと気になったから。」

と松本さんが言った。

 

・・・ああこれは

派閥の誘いなのか・・・

 

「ちょっと休むか?」

 

俺たちはMに入った。

 

結構席のある大きめの店舗。

ハンバーガーを受け取って

席を探そうと見渡と

窓際の席に座っていた男性が

こっちを見て手を挙げた。

 

・・・・!!

 

二宮さんだ!!!