・・・O・・・・

 

「てめえ達みたいなやつらが

なんでうちの高校に来てるのかと思ってよ。

来てみたらただの偵察か。

かわいいな。」

 

彼の言葉遣いががらりと変わった。

声も

さっきとはうってかわって

どすの利いた太い声が

俺の背後から聞こえた。

 

「てめえが番長だって。

笑わせんな。

この間はよくもやってくれたな。」

 

ゆーりがパンチをくらわせようと

彼に飛びかかったが

ひょいとよけてゆーりの脇腹に蹴りを入れた。

その間

俺のつかんだ腕を緩めることなく。

 

 

起き上がったゆーりが再び彼に向かう。

俺の腕も放された。

 

「やっちまえ」

 

俺たちは3人で彼に襲い掛かったが

 

あっという間に

 

3人ともやられてしまった。

その間数秒・・・いやもっとかかったんだろうけど

数秒に感じられた・・・。

 

 

強い・・・

 

こんな華奢で小柄な奴の

どこにそんな力があるんだ・・・。

 

俺は倒れこんだ地面から

顔を上げて

彼をにらんだ。

 

・・・まったく平然としている。

 

「そっちの二人・・・

うちの生徒に手出ししたろ?

もう2度とそんなことするな。」

彼はゆーりと岸を睨みつけながら言った。

 

「それから大野!」

今度は俺の方をみた。

鋭い目だった。

「二度とうちの学校の生徒に手出しすんじゃねえ!

てめえの子分にきちんと言っとけ。ぼけ!

大体てめーらは素行が悪すぎる。

ヤンキーの品格にかけるんだよ!」

 

いつの間にか授業が終わっていて

下校する生徒の姿が生徒玄関に見え始めた。

そして玄関から

大急ぎで走ってきた生徒がいた。

松本だ・・・

「どうしたんすか?」

 

「なんでもねえ。ちょっと遊んでただけだ。

なあ。」

彼が俺の腕をつかんで起こそうとするから

俺はその手を振り払って

自力で立ち上がった。

 

彼は俺の前に立ち

俺の肩に両手を置いた。

そしてい俺をぐっと引き寄せ

抱きしめるように

腕をさなかに回して

 

「俺がA高校の番長の二宮だ。よろしくね。

お、お、の、くん。」

 

と耳元でささやいた。

 

俺は

俺たちは

一言も言い返すことができないまま

A高校を後にした。