・・・O・・・

 

チャリンコをとばして

A高校に着いた。

まだ授業中だった。

 

こっそり偵察するか

堂々と渡り合うか話し合い

ゆーりと岸がやられたお礼参りということで

いっちょやってやろう!

ということになった。

 

多分授業はもう終わるだろう。

校門の外で待っていると

「なーにしてんの?」

と声が聞こえた。

びっくりして振り返ると

華奢な男子生徒がニコニコ笑って俺たちを見ていた。

 

「て、てめえこそ何してんだ。まだ授業中だろうが、ああ!」

怖い顔を作って怒鳴り声を出した。

 

一瞬びくっと肩を動かした少年は

ひるむことなく笑顔のまま言った。

「あなたたちR高の人でしょ?

番長の大野さん?あってる?」

 

「ああ、そうだ。」

名前を呼ばれ驚いたけど

俺は泣く子も黙るR高の大野だ。

こいつとは初対面だが

名前を知られていてもおかしくはない。

 

「窓から見えたから

おなかが痛くなったって言って抜け出してきた。」

 

「嘘はいけねーな。」

 

少し脅してやろうと思って一歩近づいた。

彼は全くひるまない。

 

「あなたたちだって嘘言って

学校抜け出してきたんでしょ?」

 

「俺たちはそんな嘘は言わねー。」

 

俺はこの変わった奴の顔をまじまじと見た。

わざわざ俺たちに会うために

教室を抜け出してきたこいつ。

いっちょ前にボンタンはいてるけど

小柄で色白でどう見ても陰キャだ。

さらさらの髪。

よくみると

かわいい顔してるじゃねーか。

声も声変わりしてるんだかどうだか

わからないようなかわいい声で。

 

不良に憧れているのか?

それとも、いかれてるやつなのか?

 

「で、俺たちに何か用があってきたのか?」

 

「それはこっちのセリフでしょ?

あなたたち、何の用があってきたの?」

 

「おめえんとこのボスにちょいと用があってな。」

 

「用って何?」

 

「おめえには関係ねえよ。

さあ、教室に戻れ。うろちょろすんな。」

 

と、こいつを追い払おうとしたが

番長のことをちょっと聞いておこうと思って

訊ねてみた。

 

「A高最近番長が代わったって聞いたが本当か?」

 

「・・・本当ですよ。」

 

「あの、松本を倒したのか?」

 

「そうですよ。」

 

「どんな奴だ。」

 

「どんなって・・・強いですよ。

それに頭もいいし、観察力や統率力もあって

皆一目置いてます。」

 

「いったいどんな奴だろう・・・」

「早く、会ってみてえ」

 

俺とゆーりと岸は

恐怖半分好奇心半分で

お互い顔を見合わせた。

 

少年がクスクス笑う。

「あなたたち番長に会いたいんだ。」

 

「おまえ・・・番長と知り合いか?」

「まさかお前もグループなのか?」

 

少年のニヤニヤが止まらない。

 

「なにニヤニヤしてんだ?」

 

「だって・・」

 

「・・・」

 

「俺が・・・」

 

「・・・・」

 

「番長だから。」

 

「!!」

 

彼は

俺の手をぐっと掴んで

背後に回った。

俺は腕をねじられて身動きが取れない。

 

油断した。