・・・M・・・

 

日曜日の午後

午前中の部活を終えて

午後

3人で市民プールに行った。

 

カズナリはすごく不安そうに

きょろきょろあたりを見回しながら

マサキにぴったりくっついていた。

 

彼は市民プールに来るのも初めてだという。

 

男の子だということが

バレないように生活していたからなのかと

思うと

少しかわいそうにも思ったし

でも

こうやってなんでも経験してみようという彼を

いつも全力でサポートしてやりたい

とも思った。

 

更衣室で

カズナリは

タオルをしっかり巻き付けて着替えた。

ラッシュガードもしっかり着込んだ。

そして少し恥ずかしそうに

俺たちの前へ立った。

日焼けした顔に比べて

脚が

白くて細くて

腿はお餅みたいにやわらかそうに見えるのに

ふくらはぎは

しなやかな筋肉で

きれいな脚だな・・・と思った。

 

おしりもキュッと引き締まって

スタイルがいい。

 

男子水着、似合ってるじゃん。

 

 

「行こうぜ」

 

「う、うん。」

 

俺たちはプールに向かった。

 

「水泳帽、かぶりやすくて楽だ。」

ってカズナリが言った。

 

「去年まで髪長かったからね。」

マサキが答えた。

 

帽子、ゴーグルをつけて

シャワーを浴びてプールに入る。

「準備体操は?」

ってカズナリが言うけど

「そんなのいいよ、シャワー浴びれば

それが準備だ。」って言って

俺がプールに入って

マサキが入って

最後にカズナリがそーっとプールに入った。

そして

すぐにスィーと水をひと掻きして

身体を水に浮かせた。

 

「カズナリは泳ぐのは得意なんだよ。」

マサキが言った。

「そう、泳ぐのはね。」

カズナリが俺の周りを笑顔で

緩やかに泳いだ後

泳いで俺たちからどんどん離れて行ったから

俺も泳いでカズナリについて行った。

「待って」

マサキもあわてて泳いだ。

 

水中のカズナリは

白い脚がひれのようにひらひら揺れて

まるでサカナのように優雅に泳いでいた。

追いつきそうで

追いつかない

今の俺の現実とリンクした・・・。

 

「ぷふぁ・・」

プールの恥まで泳ぎ切り

カズナリがールサイドにつかまった。

そこの俺とマサキが続く。

 

「泳ぐの早いね」

 

「うん、得意かも。」

 

「楽しい。」

 

「とっても。」

 

「水に入ってれば、水着なんてどうでもいいよね。」

俺が言うと

カズナリは俺の顔を見て

少し間を開けてから

笑顔で

「うん・・・」と言った

 

だから俺は

カズナリの前に移動して立つと

彼のラッシュガードのファスナーを

そっと下した。

 

少しずつ降りていくファスナー

何も言わずされるがままのカズナリ。

白い胸が水中でゆらゆら揺れる。

やせっぽちであばら骨がきっとみえるんだろうけど

水が揺れるから

カズナリの体も揺れて

太陽の光でキラキラ輝いて

最後までファスナーを下すと

腕を抜くため

俺は片手でカズナリの肩を抑えて

もう片方の手で

ラッシュガードの袖を抜いて

カズナリの華奢な肩から

手を放して

もう片方の袖も抜くと

カズナリ上半身があらわになる。

水の中でもわかる

白くて

薄くて

きれいな

身体。

俺はもう一度触れたくて

カズナリの肩にそっと手を置いて

そして言った。

「これ、きっと必要ないよ。」

俺は脱がせたラッシュガードをプールサイドに投げた。

「そうだね。」

カズナリの声もゆらゆら揺れる水のように感じた。

その声を発したくちびるは

思いのほか

やわらかくて暖かかったのを思い出した。

 

「潤、ありがとう・・・。」

 

ラッシュガードを脱がせている間ずっと

俺を見つめていたカズナリは

サッと方向を変えると

また泳ぎだした。

 

白い美しい魚が

スイスイ泳いで

俺から離れていく。

 

 

 

きっと

学校でも

カズナリは

何も気にすることなく

男子の水着で

プール授業に臨めるだろう。

 

そして俺は

また

美しいサカナを愛でることが

できる・・・。

 

俺は

俺から離れていく

カズナリを

急いで追いかけた。