
ささ、だいぶ長い中休みになっちまったぞ。
2006.02.24
第1回 東西笑いの喬演
柳家喬太郎・笑福亭三喬 東西二人会
@ワッハ上方 ワッハホール
ということで、お仲入り後、続きです。
15分ほどの休憩が終わり、再び幕が開くころにはもう20:00過ぎ。こらぁ夕飯は21:00過ぎだなと、空腹を抑えつつの、後半戦スタートです。
後半最初は、三喬師の二席目。
前半、上方のお二方には用意されていた見台が下げられ、膝元まですきっと見える形での一席となりました。
「以前、雀々兄さんに「おまえは泥棒がはまり役だ」と言われまして」とマクラをふりだす三喬師。確かに見た感じも、(自ら言われたように)口の周りをまるっと黒塗りしてほっかむりかなんかした日には、なんともそれらしい風体。ただ見かけだけでなく、噺としてもお得意のようで、昨年の文化庁芸術祭は泥棒噺三席でとられたそうですから、ある意味ホンモノです。
そんなこんなで本題の方へ。この噺は、舞台設定こそ古めかしいですが、新作なんだそうです。ワケありの品々を引き取ってくれると噂の道具屋の主人と、そこに持ち込みに来る間抜けな泥棒たちとのやりとりの可笑しさが主題なんですけれども、前半の噺にあった上方の風土感とはまた違う意味で、上方を感じる噺のように思いました。
間抜けな泥棒たちに振り回されながらも、合い言葉の「花に風」だけはえらくもったいつけて言いたがる道具屋の主人のように、テンポを持って繰り返す漫才風な「反復」の笑いと、次々と持ち込まれる盗品それぞれが伏線となってサゲを導く、いかにも落語風な「仕掛け」の笑いとが折り重なっているようで、楽しい一席でした。個人的には、前半の噺よりもこちらの方がより好きかな。
いよいよトリ、喬太郎師の二席目です。
「いやぁ、ホントに心から安心しました。皆さんまだお帰りでなくて。」と、またまた遠慮気味な言い回しからマクラがスタート。いつも出ているという東京の四カ所の寄席の話題から、「いやその四カ所ともがね、いかがわしい街にあるんですよ」と、ネタを予感させる話題をふり、そのなかでも、今日の会場であるなんばにそっくりだと評する池袋の街のいかがわしさが大好きだと宣言し、いよいよ本題へ。
この「結石移動症」という噺、CDやストリーミング(もう公開は終わったみたい)で既に何度も聴いてたんだけども、生で観聴きするのはこれが初めて。いったいどんな感じなんだろうと楽しみにしていたわけですが、少々傲慢に言えば、その期待にしっかりと答えてもらえた気がしました。なかでも発見だったのは、音源ではわからなかった、無音の世界で行われていた出来事。例えば、健ちゃんの息子の太郎からの電話を、娘のめぐみが受けているシーン。CDなんかでは録音を意識してか、ちょっと短い間になってるんだけども、実際にはもう少し長めに(たぶん電話で要件が伝わる程度に)無声の時間があります。で、この間何が行われているのかといえば、電話するめぐみではなく、前のシーンのつながりから、健ちゃんの描写が続いているのでありました。
この健ちゃんの描写の細やかなこと! ソープのマネージャーがお見舞いに持ってきたハインツのギフト。それに感謝するめぐみ相手に悪態をつきながらも、そのめぐみが電話口に向かった後は、手持ちぶさたとはいえ興味ありげにハインツをつまみ上げ、あちこち眺めてみたりしている様子が無言で演じられていたのでした。噺の筋という意味では、例えばCDの無音部分のように省略されても支障のないところなのかもしれないけれども、物語る芸という意味では、僕にはとてもとても印象深いものでありましたよ。もちろん、他のシーンでも、そんな様子がいっぱい見受けられました。
ということで、最後のまとめ。
本当に久しぶりに喬太郎落語を聴けて、楽しい会でした。もちろん、三喬師匠の噺も楽しかったんだけども、会場にいたワッハ常連の皆さんにとってはともかく、僕にとっては喬太郎師匠の芸がなによりのお宝でありました。「結石移動症」なんてのは、たぶん上方落語の新作なんかではまず見かけない特異な状況設定の噺であって、実際冒頭では喬太郎師自ら「ほーら面白いようにお客さんが引いていきますよ」なんてなこともおっしゃるくらいの違和感が、会場の多くの方々にはあったものと思います。でもそれを、登場人物が一通り揃ったあたりからはぐっと引き戻し、クライマックスに向けてぐいぐいと引き込んでいく様は、素晴らしい力でした。
いや、喬太郎好きとして、過分に上げ過ぎちゃってるところが間違いなくあるんだけど、まだ未聴の落語好きな方は、是非一度お試しあれ。>特に(機会は少ないけども)関西の方々。