◆Kenji Omura 『春がいっぱい~Spring is Nealry Here』(1981)
$テクノポップ秘宝館
【SIDE-A】
1.INTENSIVE LOVE COURSE
2.UNDER HEAVY HANDS AND HAMMERS
3.SEIKO IS ALWAYS ON TIME
4.FAR EAST MAN
5.KNIFE LIFE
【SIDE-B】
6.春がいっぱい(SPRING IS NEARLY HERE)
7.THE DEFECT0R
8.INAUDIBLE
9.MAPS
10.THE PRINCE OF SHABA

テクノポップ全盛期をリアルタイムで体験した世代にとって、
1981年という年は特別な年として認識している人が多いようだ。

その理由は数多くの傑作アルバムが作られたからであろう。

YMOの「BGM」「TECHNODELIC」をはじめ、
高橋幸宏「NEUROMANTIC」、The Beatniks「出口主義」、
KRAFTWERK「COMPUTER WORLD」、JAPAN「TIN DRUM」等々・・・。

その中でも、名作誉れ高いのが今回取り上げる大村憲司氏の
3枚目のアルバム「春がいっぱい」だろう。

高橋幸宏・坂本龍一を共同プロデューサーに向かえ、YMOの第2回
ワールド・ツアーの勢いをそのままスタジオに持ち込んだような
充実した内容になっている。

サポートメンバーには先の2人に加え、細野晴臣、矢野顕子、
松武秀樹のツアーメンバーはもちろん、加藤和彦、清水靖晃、
岡田徹と実力は揃い。

$テクノポップ秘宝館

音楽面ではYMOのツアーに参加した事が大きな影響と思われる。
1曲目の「INTENSIVE LOVE COURSE」から軽快なテクノポップ
炸裂で、聴く者は一気に引き込まれるであろう。

◆Kenji Omura / Intensive Love Course


他には、YMOファンにはおなじみの高橋幸宏作曲「MAPS」も
このアルバムに収録されているものがオリジナル。幸宏氏はもう1曲
「THE DEFECTOR」も提供している(これも名曲!)。

「FAR EAST MAN」はジョージ・ハリソンのカヴァー。
バッキング・ヴォーカルには矢野顕子さんが参加している。

また、インタールード的な曲だが、「INAUDIBLE」はYMOの曲
「磁性紀」を彷彿させる実験的な曲。幸宏氏のドラムがすごい。

タイトル曲「春がいっぱい」はイギリスのグループ「THE SHADOWS」
のカヴァー曲。シンセを使ってはいるものの、オリジナルを尊重した
アレンジになっている。

◆Kenji Omura 「春がいっぱい」


1998年に49歳の若さでこの世を去った大村憲司氏。
YMOのライブのサウンドは彼が参加した事によって完成した
といわれるほど、その存在は大きかった。

その後も幸宏氏をはじめ、様々なミュージシャンのサポートに
ひっぱりダコだった彼こそ、ミュージシャンズ・ミュージシャン
と呼べるのではないだろうか。
最近はアニメ「ケロロ軍曹」の音楽を担当している事でも知られる、
鈴木さえ子さんは1980年代にソロアルバム4枚を制作したり、
様々なセッションに参加したり、と幅広く活躍されていた。

ただ、自分は残念ながらステージでのさえ子さんを見たことが無い。
ソロのライブだけでなく、坂本龍一氏のユニット「B-2 UNITS」や
立花ハジメ氏のバンド「H」にもドラマーとして参加していたが、
どちらも見ることが叶わなかった。

そんな鈴木さえ子さんの貴重なライブ映像をYouTubeで発見して、
少々興奮している。

ライブの会場と日時の詳細は記載されていないが、
コスチュームから判断すると1985年に発表されたアルバム
「緑の法則」の時のライブのようだ。

◆鈴木さえ子/GREEN-EYED MONSTER


この曲は「緑の法則」に収録されている曲。
ホラーやオカルトが好きなさえ子さんだけあって、
曲調はポップなのに、詞の内容がちょっと怖い、
独特な雰囲気を持っている。個人的には大好きな曲でもある。

このときのライブはメンバーも豪華のようだ。
ムーンライダーズの面々に加え、矢口博康、福原まりの姿も見える。

そして、もう一曲アップされていた曲「フィラデルフィア」は
インストだが、そちらはとにかく圧巻の演奏だ。

◆鈴木さえ子/PHILADELPHIA


この曲はソロデビューアルバム「毎日がクリスマスだったら・・・
I Wish It Cloud Be Christmas Everyday」に収録されている
インスト。

さえ子さんはもともとヴォーカリスト志望ではなかったので、
アルバム収録曲のインストの曲の比率はかなり高い。

それに加え、フランク・ザッパや10CC・ゴドリー&クリームなど
かなり癖のある音楽が好きな事もあって、変拍子バリバリで複雑な
構成の曲を沢山作っている。

この曲もそんな中の1曲だが、とにかく演奏がすごい。
テクニックなどレベルが高いのはもちろん、迫力がすごい。

圧巻なのはさえ子さんの叩くドラムだろう。
音だけ聴いていると、とても女性が叩いているとは思えないほどの
パワフルでアグレッシブな演奏は、いつ聴いても鳥肌が立つ。

さえ子さんの残っている映像はかなり少ないと思うので、
これをアップしてくれた人には感謝したい。

I WISH IT COULD BE CHRISTMAS EVERYDAY(紙ジャケット仕様)/鈴木さえ子

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◆Thomas Dolby "The Golden Age of Wireless"(1982)
 Produced by Thomas Morgan Dolby Robertson
 Except(*)Tim Friese Greene & Thomas Dolby


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【SIDE-A】
1.SHE BLINDED ME WITH SCIENCE(*)
2.RADIO SILENCE
3.AIRWAVES
4.FLYING NORTH
5.WEIGHTLESS
【SIDE-B】
6.EUROPA AND THE PIRATE TWINS
7.WIND POWER
8.COMMERCIAL BREAKUP
9.ONE OF OUR SUBMARINES(*)
10.CLOUDBURST AT SHINGLE STREET

※リマスター盤CDは曲順が変更されているようです。

1980年代の特に前半は、実に様々なシンセサイザーが登場し、
日進月歩で各メーカーもその技術を競っていた。

中でもユニークだったのが、シモンズのシンセ・ドラムだろう。
世界初のオール・シンセ・ドラム・キットとして、
当初は世界中のミュージシャンが使用していた。

日本の、特に自分と同じく80年代をリアルタイムで
すごした方なら、C-C-Bのヒット曲「Romanticが止まらない
で使われていたドラムと言えば、その音をイメージ出来るのではないだろうか。

個人的にシモンズのドラムを全面的に使った曲で思い出すのは、
今回取り上げるトーマス・ドルビーのヒット曲「彼女はサイエンス」
(A-1)だ。トーマス・ドルビーは後に坂本龍一氏とのコラボレーション
「Field Work」でご存知の方も多いのではないだろうか。

◆アナログ盤ジャケット
$テクノポップ秘宝館

最初、シモンズの音は自分的には好みではなかったが、
しばらくしてこの曲を聴き直した時、突然すごく魅力的に
聴こえるようになった。なぜか理由はわからないが・・・。

このアルバムに収録されている曲には、先の「彼女は・・・」以外の
曲にもシモンズのドラムスが多用されている。

トーマス・ドルビーの曲はそれだけでも、テクノポップとして
成り立っているが、シモンズの独特の音がさらにテクノポップ度を
高める気がする。


◆アナログ盤ジャケット裏
$テクノポップ秘宝館

一つの音に注目するという偏屈な感想ばかり書いてしまったが、
「彼女は・・・」が大ヒットした事からもお分かりの通り、
トーマス・ドルビーはソングライターとしての才能も高い。

彼はファンクが好みらしいが、曲によっては所々にトーキング・ヘッズ
のデヴィッド・バーンの影響が感じられる。

このアルバムの収録曲は、先にシングルとして発売されていた
曲が多いこともあって、どれもキャッチーで聴き易い
(当時発売された日本盤レコードはオリジナル盤に「彼女は・・・」
などを加え編集しなおした再発盤のようだ)。

◆インナースリーブ
$テクノポップ秘宝館

また、ゲストミュージシャンも豪華で、自分が知っている所では
ミュート・レーベルのダニエル・ミラーや、日本からは矢野顕子さんが
参加している。

この頃、すでにYMOのメンバーは多くの海外のミュージシャンの
アルバムに参加していたが、アッコちゃんが海外のミュージシャンの
レコーディングに参加したのは、非常に珍しいのではないだろうか
(A-2「RADIO SILENCE」の女性ヴォーカルがアッコちゃん)。

◆THOMAS DOLBY / SHE BLINDED ME WITH SCIENCE


時にはユーモラスで、時にはカッコよく、さらにグッとくる曲も
あるこのアルバムは、テクノポップのエッセンスが凝縮されていて、
何度聴いても聴き飽きることがない魅力を持っている名作だと思う。