まず先に彼が連れてきてくれたのは、呉服屋さんだった。



「これはこれは土方様。ご注文の品、仕上がっておりますよ。」



「あぁ。だんな、それをこいつに着つけてやってくれ。」



「はいただいま。ではすぐに店の者にやらせましょう。」



そして、私は彼の見立ててくれた着物を着つけてもらった。紫がかった綺麗な色の着物だなぁ。それから、この柄は…何の花だろう?



「お客はん、あの旦はんに愛されてますなぁ。」



お店のお姉さんが着付けをしながらにこやかにそう言うので、



「そ、そうでもないですよ?」



私は思わず、謙遜の言葉を口にする。



「いんや、この柄は桔梗の花でな…花言葉は“変わらぬ愛、誠実”なんよ。」



どうしよう…私。土方さんが着物を、しかも花言葉を知っていたかどうかは分からないけれど、こんなに素敵な柄を私の為に選んでくれていたことが嬉しすぎる。



「あの…着付け、終わりました。」



「あぁ・・・行くぞ。」



ドキドキしながら土方さんの前に立つ。何か言ってくれるかなって少し期待したんだけど、彼は黙って私の手を引いて外に出る。



「おきばりやす。」



お姉さんがこそっと耳打ちしてくれた。



「あのっ、土方さん…着物、ありがとうございます。・・・似合って、ますか?」



私の問いかけに驚いたように足を止めた土方さんは、一度照れたように目線を逸らした後、私の目をじっと見て言った。



「当たり前だ。俺が選んだんだよ・・・お前の為に…な。」



そして、ふっと笑う土方さんに大人の色気を感じる。



「ほら、行くぞ。」



「は、はいっ。」





そしてその後は、彼が走らせる馬に乗り…、着いたのは小高い丘の上だった。ここからは京の街が一望できる。そして、ちょうど時刻は…夕日が向こうの山へ沈む直前だった。



暖かな赤い日差しが京の街を照らしている。それを、大好きな人と手を繋いで眺めている。



「…幸せだよ。」



「ん?何か言ったか?」



小さな声で呟いて笑う。おかしなやつだな、と彼も笑っている。



ふと、自分の足元に目を落とすと、色が薄くなっていくのがわかる。あぁ…もう時間なんだ。



「土方さん…」



「なんだ?」



ぶっきらぼうに言うのは照れ隠し、もうわかっているんだから。



「今までで一番幸せな誕生日を、ありがとう…。」



「…園っ!!」



もう手の方まで透けてきちゃった。



「私、あなたのこと、もう絶対忘れません!」



「園!俺はお前を…」



『愛してる』



最後の言葉は重なった。大丈夫。もう二度と会えなくても、住む世界が違っても、心はつながっている。この想いも二度と忘れない。



私は自分の道をしっかり歩くから。



だから。



あなたもあなたらしく…その生を全うしてね。





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それから。



ほんとに私は現代へと戻ってきていた。待ち合わせ場所に現れた私の姿を見て、友達たちはいったい何があったのか、ってだいぶ心配してたっけ。



なんといっても、着ている物が洋服から着物に変わっているし、碑石の前でさんざん泣いたせいで、マスカラも落ち、目が赤く腫れてしまっているし。



でも、



「ん~大丈夫。私、今幸せだから!」



そう言って笑う私の顔があまりにもすがすがしいから、なんだかわかんないけどあんたが幸せならいいや、とも言っていたけど。



「そうそう、はいこれ!」



そう言って友達がくれたのは…



春らしいチューリップとスイートピーの花束だった。全体的にピンク色でとっても可愛い。



「お園、誕生日おめでとう♪」



「スイートピーの花言葉にはね、“優しい思い出”とか“門出”とかってあるの。お園との思い出は良い思い出がたくさんだし、そろそろお園にもいい人が見つかるといいなっていう願いも込めて…。」



友達の心遣いに私はまた涙が溢れてくる。



ほんとに今日は、今までで一番の誕生日だよ…土方さん。





ギュッと花束を抱きしめた瞬間、暖かく優しい風が私の頬を撫でていった。



*終*






『園さん、これからも素敵な思い出をたくさん作ってくださいね♪お誕生日おめでとうございます!!』