「誰だ!」



鋭い声と共に襖が勢いよく開いて、私の目の前にはきらりと銀色に光るものが突き付けられた。



「あ…あの・・・ごめんなさい。」



「お前は…まさか。」



目の前にいるその人は、私以上に驚いた顔をしていた。ただそれはほんの一瞬で、彼は刀をすっとしまうと、外の様子を確かめてから私を部屋の中へ招き入れた。



「・・・。」



「・・・。」



どう切り出していいものかお互いに悩み、無言の状態が続く。私の胸の音だけが部屋の中に響いているように感じる。



夢にまで見たあの人が、今目の前にいる。



「土方さ…」



「なぜ、お前がここにいる?」



私が意を決して掛けようとした声を遮るようにして彼が口を開いた。



「それも…今日、この日に。」



はぁぁと頭を抱えてしまっている。あれ、なんだか困ってるみたい。



「あの、それってどういう意味でしょうか?」



「…これは、夢か?」



自分の頬をつねっている。これは珍しい姿だ。誰からも鬼副長と恐れられている彼のこんな姿は誰も見たことがないだろう。



「ふふっ。」



思わず笑いをこぼすと、



「笑うな。」



そう言って睨んでくるけどちっとも恐くない。



あの時と比べて私は大人になった。そう…こんな時、自分から彼に手を伸ばせるくらいには。



「土方さん…ほら。さわれるでしょ?温かいでしょ?」



そう言って彼の手を取ってその手を自分の頬に当てる。



「…っ!!」



すると、急に彼の腕に力がこもって、私はそのまま彼の腕の中におさめられた。



「お園っ!」



つーっと私の目から涙がこぼれる。



「…会いたかった。」



「…あぁ。俺もだ。」



お互いの顔を確かめるように見つめ合い、どちらからともなく唇を合わせた。離れていた時間を埋めるように。久しぶりの愛しい人の温もりに私は再び涙をこぼした。



「・・・。」



土方さんの腕に抱かれながら、このまま刻(とき)が止まってしまえばいいのに…そう思わずにはいられなかった。



でも、私ももういい大人だ。そんなことは無理だってわかってる。ここにいることだって、奇跡みたいなことなんだから。だったら、このチャンスを楽しまなくっちゃ。言いたいことを言って…聞きたいこと聞かなくっちゃ。



「あの、土方さん…夕暮れまでの時間を、私にくれませんか?」



「夕暮れ…どういう意味だ?」



「日が暮れたら…私はきっとまた元いたところに戻ってしまうんだと思います。」



「・・・!」



「私にもよく分からないんですけど…」



私がここに来ることになった経緯を簡単に説明した。すると、彼はギュッともう一度私を抱く腕に力を込めて…



「お前を今日、連れて行きたい場所が二つあった。」



「それって、あの時楽しみにしておけって言ってた…?」




「あぁ。」