「来たよ、とうとう。あなたの…最期の場所へ・・・。」
ここ、一本松関門は土方歳三が息を引き取った場所の中でも最も有力な地と言われている。そして、彼が函館新政府で陸軍奉行並として働いた場所である五稜郭から少しだけ離れた場所にある。
私の名前は園。友達からはお園ちゃん、と呼ばれたりもする。小さい会社で事務員をしている。今、学生時代の友達5人と一緒に函館旅行に来ているんだけど、3月20日、私の誕生日である今日は友達に適当な理由を付けて午後から夕食までの間だけ別行動を取らせてもらった。
そう…
長い間忘れていた“彼”の最期の地へ行くために…。
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私は高校生の頃、他の人には言えないすごく不思議な体験をした。修学旅行で京都に行ったときに、ある古道具屋で見つけたカメラを触った途端、幼馴染の翔太君と一緒に、幕末の世界にタイムスリップしてしまったのだ。
そこで、色々の出会いがあった。心から愛しいと思える人にも。
その人とずっと一緒にいたいと、そう願っていたんだけれど…。
その人は、不器用で、でもとても優しい人だったから…私を未来へ帰すと心を決めてしまった。
あの時のことをずっと忘れていたのだけれど、つい最近思い出したんだ。翔太君にも確認したら、やっぱり本当のことだった。
すごく寂しかったし、悲しくて、その後何日かは泣いて過ごした。
でも今は…彼と出会えたことは私の中で一番素敵な思い出だったと思っている。
だって、彼はずっと私の心の中にいる…。目を閉じれば、あの照れたような顔を思い浮かべることが出来る。それに、あの人は私が泣いていることを望みはしない。
だけど、一つだけ心残りがある。それは…私の誕生日にかかわること。
私達が想いを通わせるようになって、しばらくしてから、彼がふとこんな話をしてきた。
「なぁ、お園。…向こうでは“たんじょうび”に祝い事をするんだったな?」
彼には私が未来から来たことや今と違うところなどを少しずつ話していた。土方さんは笑うことなく、気味悪がることなく私を信じてくれた。そして、そんな私を…愛してくれた。
「えぇ。そうですよ。みんなでご馳走を食べたり、贈り物をしたり、とても楽しくて嬉しい日なんです。」
私は彼にお酒を注ぎながら、ふふっと笑った。
「そうか…。」
「…土方さん?」
「次のお前の誕生日、楽しみにしておけ…。」
ぐいっとお酒を呑みほして、そう言う土方さんの頬が少し紅くなっているように見えた。
こんな話をしたのは確か、とても暑い夏の日だった。
「はいっ。」
嬉しくてそう返事をしたのだけれど・・・
次の春の、私の誕生日が来る前に、翔太君がカメラを見つけてきて…
土方さんは、私と翔太君に向けて、カメラのシャッターを切ったんだ。
「すまない。約束、守れなくて…でも。お前には平和は場所で、幸せになって欲しい。」
薄れゆく景色の中で、最後に言ってくれた言葉も…最近までずっと忘れていた。
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