もうすぐ春を迎える、ホワイトデーまであと3日と迫るある日のこと。




「…なぁ、原田。聞きてぇことがあるんだがちょっといいか?」




「土方さん…なんだ?」




あまり大きな声で話せる内容ではないので、俺は少し声を潜めて切り出した。




「あー…あのだな、もうすぐホワイトデーとやらが来るだろ?」




「ん?あぁ、そうだったな。土方さんもバレンタインに立派なモノをもらっていたもんな。」




何かを察した原田がニヤッと笑った。




「そういうお前だって…あの子から手作りチョコをもらったとか言って、皆に自慢して回っていただろう?」




「そりゃな。自慢の女だからな、あいつは。」




「それを言ったら俺の方こそ…」




脳裏にあいつのいつもの笑顔が浮かび、ぼそりと口の中だけでそう呟いた。




「で、聞きたいことって何なんだ?」




「そのホワイトデーに、何を返したらいいものかと悩んでな。」




俺は原田のように想いを素直に伝えることが出来ていない、と思う。そのせいで時々あいつが寂しそうな顔を見せることも知っている。だが、もうそれは性格上仕方のないものであって…。




上手く表せないだけで、俺が必要としているのは…愛しく思っているのはあいつだけだ。




だからこそ、男が女に贈り物を返すこの日に何かしてやりてぇって思ったんが…何も思いつかず、こうして恥を忍んで原田に尋ねているってわけだ。




「そうだな~…確かに男から女に贈り物のお返しをする日なんだけどよ、何も“物”にこだわらなくてもいいと思うんだ。」




「…どういうことだ?」




「例えば…どこかに連れて行ってやるとか、いつもできないことをしてやるとか…?」




「・・・っ!」




まるで心の中を読まれたかのような、原田の言葉に俺はドキッとした。




「どうせ土方さんのことだから、何も言ってやってないんだろ?駄目だぜ~。わかってくれているように見えても、言葉にしねぇとほんとのところは伝わらないもんだぜ?」




「うっ…。」




図星を突かれて、俺は言葉に詰まってしまった。




「まぁ、そう深刻に考えることはねぇって。日ごろの感謝を伝えるにもいい機会だと思うけどな。」




日ごろの感謝…そうだな、確かに。あいつは仕事もして、家のこともして、毎日美味い飯を作ってくれる。それが当たり前のことだなんて、思ってはいないが…改まってそんなことを言おうだなんて、考えもしていなかったな。




「そう…だな。」




俺は決意を固め、原田の視線をまっすぐに受け止めて頷いた。そんな俺を見て満足そうに笑うこいつに少しばかり悔しさが込み上げるが、今日のところは仕方がない。




「ところでお前はどうするつもりなんだ?」




「俺か?うちは、たまたま当日にお互いの休みが重なったから、温泉にでも連れてってやろうと思ってるぜ。」




「相変わらず仲良くやってるみたいだな。」




「当たり前だろ~。あんないい女は他にはいないからな。」




当たり前のように惚気てきやがる。




「そうだな…まぁ、あいつには負けるけどな。」




俺の言葉に一瞬の間を置いて原田が笑い出す。




「土方さん…言うようになったな。その意気だぜ!」




「ふっ…。」




“物”でなくてもいい…か。確かに今からだと大した物は用意できねぇ。




けれど、いつもは照れくさくて言えねぇ言葉を言うだけで、あいつが喜んでくれるのなら…。









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こんな俺に文句も言わずついてきてくれるお前へ。




『お前がいてくれて心底よかったと思ってる…本当だ。』




それから、




『…お前が俺のものになってくれたなんて今でも信じられねぇ気持ちもあるんだが…。』




そうか…。




『お前は俺のもの、か。なら、俺もお前のものだ。今もこの先も、何があってもずっと…。』




そうだ…その笑顔でずっと俺の隣にいてくれ。







fin.