私は溺れている…深く、深く。



もう、あなたしか見えない。あなたしか欲しくない。





「お前は特別だ…お前だけ…。」



あの時言ってくれた言葉を今でも覚えているよ。あなたの腕の温もりや唇の甘さと一緒に…。



でも、照れ屋なあなたは、



「したいならお前からしてくればいいだろう。」



と、口づけをねだる私に言う。あなたからして欲しいのに…、って心の中で思いながら、私はそっと唇を合わせに行く。



たまにはあなたからの口づけが欲しい…奪うような激しい口づけが…。



こんな風に考えてしまう自分が恥ずかしくて、それを口に出すことはできないけれど。



そんな思いを胸に秘めていたある夜のこと。







「もう寝るとするか…。」



と言って、一さんは先に布団へ入った。



私は食事の後片付けを終わらせ、明日の服を用意し、寝間着に着替えてからその隣へすっと体を滑り込ませた。



一さんは目を閉じている。



もう寝ちゃったのかな…、少し切なくなってぎゅっとその腕を掴み、体を摺り寄せた。



すると…



「遅い…。」



寝たふりをしていたらしい一さんが言った。



「だって…。」



私が言い訳をしようとするのを遮って、背中の下に手を入れ近くに引き寄せる。



「俺が早くこうしたかったのが分からなかったか?」



珍しくそんなことを言うから、



「・・・。」



ドキドキと胸が高鳴るのを感じた。頭をくっつけている一さんの胸からも同じくらいの速さの鼓動が聞こえる。



一さんも、ドキドキしているんだなぁ。



そう思って胸がきゅんとなる。すると、何も言わずに一さんの手が服の裾から中に入ってきて、すーっと背中や胸の横を撫で始めた。



一さんの手、温かくて気持ちがいいな。



撫でられるにつれて、だんだんと私の身体も熱を帯びてくる。



「…んっ…。」



さわさわと一番敏感なところを避けるようにして胸を撫でられる。自然と甘い声も漏れる。



「・・・・。」



そんな私を優しい目で見つめながら、一さんは上半身を持ち上げて、何も言わずに服の裾を捲り上げてそこに顔をうずめようとした。



「や…っ。」



思わずそう言うと、一さんの動きがピタッと止まった。



「…いや、か?」



真顔でそう尋ねられるから、少し返事に困っていまう。



「あ、あのね…いやとかそういうのではなくて…。」



一さんとするのは初めてではないし、同じような展開でしたことも、ある。一さんに触れられるのは嬉しい…。



でも、今日は・・・



「…まだ、ちゅーしてない・・・」



あなたの、その唇で最初に触れる場所は、この唇がいい。



私を快楽へと導いてくれるその行為も、一さんの想いがこもっているし、一さんとなら嬉しいものだけれど、一番私を悦ばせるものは…私が一番欲しいものは・・・



あなたからの口づけなのだから…。





「・・・っ!」



一さんは、私の言葉に驚いたような照れたような顔をした。そして、



「…し、したいのならお前からしてくればいいだろう。」



あぁ、やっぱりそう言うよね。そうだよね…いつもなら、したいから、その言葉の通りに自分から口づけていたけれど…。



「…ううん。今日は、一さんからして…欲しいな。」



ちょっと勇気を出して言ってみた。



「…っ…できるか・・・」



「え…?」



「そんな、恥ずかしいことができるかっ・・・」



そう言って一さんは、服の上から私の胸に顔を隠すように覆いかぶさった。



「もしかして…照れてる?」



「…悪いか。」



「ふふふっ。」



その、子どもみたいな様子に、何だか一さんの可愛い一面をまた見たような気がして、そっとその髪を梳いた。



「いつも大胆なこともするのに…未だにちゅーは照れるんだね。」



「・・・。」



図星だったようで黙りこくっている一さんの頭をするすると撫でる。



愛おしい。そんな感情が湧き上がる。



「一さん…。」



私が名前を呼ぶと、一さんは顔を上げた。目が合い…そして、私はそっと目を閉じた。



その瞬間。



「…っ。」



一さんから口づけをくれた。嬉しくて、涙がこぼれそうになる。



「…ぁ…ふっ…。」



貪るように、私を丹念に味わうように、その舌を絡めてくる口づけに…



私はまた、心も体も彼に溺れていくのだった。





「…○○、愛してる。お前だけ、だ。」



一さんの熱をなかに感じながら、そんな言葉を聞いた。



「私も…あなただけ…っ!」



あなたとならどこまでも・・・。





そうして私達は、何度も、何度も互いの熱を感じ、寄り添いながら幸せな眠りについた。





今はもう、私達を引き離すものは何もない。



だからこうして、その幸せに溺れてしまうのかもしれない。



でも、こんな日が来るのを私達は待っていたのだから…。

~おわり~