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そんな生活を始めて…数年が経ったある日。
「あ、千鶴ちゃん。お帰り。」
買い物から帰ると、隣のおばさんが玄関先に打ち水をしながら声を掛けてきた。
「今ねぇ、あなたを訪ねて男の人が来たわよ。」
「え…?」
「今は出かけていますよ、って言ったら、『じゃぁまた来る』と言っていたわ。」
「・・・!!」
私はどさっとその場に荷物を取り落した。
「あの!その人、どっちに行きましたか?」
「あ、あぁ。…あっちの方に歩いて行ったけれどもう近くには…」
いないんじゃないかしら、という言葉を背に受けながら、おばさんの指差した方向に私は駆け出した。
『・・・原田さん!!!』
頭に浮かんだのは、あの人の優しい笑みと大きな手。
「はぁはぁ…!」
ひたすら走り続けると、前の方に旅姿をした男の人の後姿を見つけた。
「・・・は、原田さんっ!!」
思わず、大きな声でそう呼びかけると…その人はぴたっと足を止めて、こちらを振り返った。
「…っ!!」
「やっぱり!千鶴ちゃん…だよな?!」
振り返ったその人は…あの日原田さんと一緒に新選組を離れた永倉さん…だった。
「…な、永倉さん?」
「久しぶりだなぁ…元気にしてたか?」
だだだっと駆け寄ってきて、バシバシと私の背中をたたく力の強さや豪快な笑いは、あの頃と何にも変わっていない。
「あ、あの…原田さんは…一緒ではないんですか??」
思わずそう聞いてしまったけれど、本当は、答えを聞くのが恐くて堪らない。
ねぇ…
別のどこかにいるって…
後で来るって…
そう言って・・・。
でも…私の問いかけに永倉さんの笑顔がすっと消えた。
「あ、あぁ。そうだよなぁ、あれから…会ってないんだもんな。」
歯切れの悪い言葉。視線を合わせようとしない永倉さんを見て…私は悟ってしまった。
もう…彼は、原田さんは…不知火さんの言ってた通り、この世にはいないってことを・・・。
俯いて黙り込んでしまった私を見て、永倉さんは慌てた様子だったが、
「あー…ちゃんと話す!どこかゆっくり話ができるところはねぇか?」
そう真剣な顔で言うから、私は彼を家へと案内した。
「・・・。」
「・・・。」
永倉さんを居間に通し、お茶を出してから、沈黙が続く。永倉さんも言葉を探しているようだった。
「あのなぁ…千鶴ちゃん。…左之は、左之は・・・なぁ・・・」
ぐっとその拳を握りしめ、永倉さんは意を決したように話し出した。
その内容は、以前不知火さんが来て話してくれたことと変わりなかった。でも、それが原田さんの一番信頼していた永倉さんからの言葉となると…信じないわけにはいかなくなってしまった。
「そんな・・・」