私の元に、久々に訪ねてきた人物は…不知火さんだった。
「あ、あなたは…!」
「よぉ…女鬼。久しぶりだな。」
「何でここへ?…何の用ですか、はっ…また私をさらいに?」
「生憎だが俺は風間の野郎に協力しやる義理はねぇ。今日はな…言伝に来たんだ。」
「言伝…ですか?」
「あぁ。…原田からのな。」
ドクン。
久しぶりに聞いた、想い人の名前に心臓が跳ねる。目の前にいる不知火さんは笑っていない…。少しの沈黙。ドクドクという自分の心臓の鼓動だけが大きく聞こえる。いったい…何の話?
「原田さんからの…言伝…?」
「…あぁ。」
ふぅと息を吐きだしてから、不知火さんは一息に言った。
「“すまなかった。約束を破っちまって。”・・・だそうだ。」
「…!」
「…じゃぁな。それだけだ。」
そう言うだけ言ってさっさと踵を返した不知火さんの腕を、私はとっさに掴んだ。
「待って!あの…原田さんは今…どこで何を…?」
「・・・。」
「・・・。」
「…死んだよ。」
「え・・・。」
頭の中が真っ白になるのが分かる。腕を掴んだまま固まっている私に、不知火さんは続ける。
「江戸へ、新羅刹隊が大量に攻めるっていう話を聞いて…アイツと俺はそいつらを止めるために戦ったんだ。あの綱道ってじじいとまがいものどもはすべて始末した。だが、原田はその時に…。」
「・・・。」
「なぁ、女鬼…。何でおれが気に入った奴はさっさと逝っちまうんだろうな…。」
不知火さんの目元が光ったように見えた。
「もう行くぞ。俺はもう人間たちのやることには関わらねぇから。…お前も、自分は本当に何をしたいのか…考えた方がいいぜ。」
今度こそ不知火さんが立ち去って行く。その後姿を見ながら、私は呆然とその場に立ち尽くしていた。
・・・父様が死んだ・・・?
・・・原田さんが・・・死・・・・・・っ
「そんなわけ…ないよ。原田さんが死ぬわけない。だって、必ず迎えに来るって言ったもの。あの鬼の人がホントのことを言っているって証拠はどこにもないもの!…うん、きっとそう。」
原田さんが私を置いて…逝くはずない・・・。
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そのうちに…
近藤さんが新政府軍に投降し…
沖田さんが羅刹の力を使い切り…
斎藤さんは会津の人たちと共に…
土方さんは蝦夷という地で…
それぞれの最期を遂げた、という話を風の噂で知った。
私はというと…
不知火さんが来た後すぐに、土方さんにお願いをして新選組を離れていた。行く場所は、父様と暮らしていたあの家。私の帰る場所はそこにしかなかった。
それに…
もしも、原田さんが私を探してくれたとしたら、何も手がかりのない場所にいたら困るだろうと思ったから。
・・・そんなことありえないと心のどこかでは分かっていたが…そうでも思わないと、生きる希望さえ無くなってしまう気がして…。
だから、あの日から私は、娘の姿に戻り、この家で淡々と生きていた。
原田さんを想って泣くこともなければ、楽しくて笑うということも、なかった。
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