「…なんか、急に寒気が。風邪か…。」



もう少しで今日の仕事が終わる。そう思っていた時、



「土方さん、いらっしゃいますか??」



襖の向こうから声が掛けられる。この声は、千鶴か。



「どうした?…何かあったのか?」



「何だか、永倉さんたちが…(あれどうしたんだっけ?)。えッとですね…沖田さんが、新八さんを止めないとって…。」



焦っているのか千鶴の言葉はいまいち掴みにくい。だが、先ほどの光景を見ていたので、新八たちがまた何かをやらかしたのだろうと想像がつく。



またか…。



いくら元日で全員が非番とはいえ、あいつらが羽目を外しすぎるとろくなことがねぇ。ことによっては一つ、お灸すえとくか。



「わかった、見に行く。お前は部屋に戻っていろ。」



「わかりました。」



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土方さんが出て行った部屋では…



「よしっ。これはここに結んで…と。」



総司がせっせとあるものを仕掛けていた。



「よいしょ。これはこの辺かな。」



千鶴が土方を連れ出し、あの三人があの人を足止めしてくれているうちに…その罠というか総司の可愛い(?)悪戯は設置された。



「できた。…どんな顔するかな~楽しみだなぁ。」



それから元の通りに襖を閉め、頃合いを見て新八たちに合流するため、部屋の近くでその様子を伺った。



「ちょうど雷が落とされている時だと、とばっちり喰うからね♪」



なんの悪気も、悪びれもないのが、総司だった。面白いものを見ているのが好きなのである。





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問題の部屋へ近づくと、新八や左之、平助の大きな笑い声が聞こえる。あいつら、こんな真昼間から酒でも飲んでいるんじゃねぇだろうな。



そう思って、襖をさっと開けた。



「…うぉ。土方さん!」



「思った通りだな。」



少し俯いたその前髪に隠れた瞳がキッと光ったように見えた。



「お前ら…いったいこれはなんの騒ぎだ!!いくら休みだからとはいえ屯所で酒盛りなんてしやがって…!!」



「お、俺は悪くねぇからな。新八っつぁんと左之さんが早く飲もうって言い出して。」



「誰が言い出したかなんて聞いちゃいねぇ。」



平助の言い訳はぴしゃりと封じられる。そして、部屋の様子がおかしいことに気付いた。置物はあちこちに転がっているし、奥の襖や障子はいくつも穴だらけだ。



「おい、左之。これは…いったいどういうことだ?」



「それはよぉ~…!」



言い訳しようとした左之はぴんと閃いた。総司の言う時間かせぎの為…そして何より、面倒なお説教から逃れる為の方法を。



「土方さん…こまは出来るか??」



「んぁ?」



「いや、俺達たまたまこのこまを見つけたんだけど、誰も上手く回せなくってよ。土方さんならできるんじゃねぇかって思って…よ。」



「お前、話をすり替える気か?」



「い、いやいや。そんなんじゃねぇよ。部屋をこんなんにしちまったのは悪かった。だけど、こまさえ上手く回せていたらこうはならなかったんだ。」



新八も平助も赤い顔をして、そうそうと頷いている。ふぅとため息をついて…



「…貸してみろ。」



こまを手に取った。やるのは何年振りか…だが。



「やっ!!」



しゅるるると軽快な音を立てて、畳の縁でこまが回っている。



「土方さん…す、すげぇ~~。」



三人とも、感嘆の声を上げる。ふん。悪い気はしねぇ。



「このくらい序の口だ。」



そう言って、次のこまを回しながら投げ、自身の手のひらの上で回した。



「おぉ~!」



「そらよっと。」



それを宙に投げ、今度は手の甲だ。それを見た三人は、すごいすごいと拍手喝さいだ。ふんっと笑みをこぼす。



「まぁ、このくらいできるようにならねぇとな。それから…壊したものは責任もって直しておけよ。」



「あ、土方さん!」



それから、そう諭して出て行きそうになるので、平助が慌てて呼び止める。