★前編に行く。


「美里…待たせたな。」



「ううん。私もさっき来たとこ。」



今日は付き合って半年目のデートの日。以前から二人で行きたいね、と話していた…



「あ、ここ♪…ここのチーズケーキがすっごく美味しいんだって。」



とあるカフェに来ている。



付き合ってみて分かったのは、土方さんはお酒より甘いものが好きだってこと。顔に似合わず…なんて前に言ったら本気で拗ねられたからもう言わないけど。



「そうか…楽しみだな。」



私も甘いものには目がない。だから、こうやって同じ好きな物を楽しめるのがたまらなく嬉しい。



店に入ると、まず目に飛び込んできたのはショーケースの色とりどりのケーキ。ここで注文をして、窓際の席でドリンクと一緒に食べられるんだって。



「うわぁ、どれもおいしそう~。」



私が目を輝かせてたくさんのケーキを見つめていると、



「…ほんとにケーキが好きなんだな。」



後ろで土方さんがにやにやと笑みを浮かべている。



「えー…でも、土方さんも好きでしょ?」



私は頬を膨らまして、拗ねたようにそう尋ねた。



「俺は…お前の方が好きだけど?」



「…!」



一瞬何を言われたかわからなくてぽかんとして…すぐにその意味を理解して顔に熱が帯びる。



「な、こんなとこでいきなり何を言ってるの?」



店員さんも気まずそうに微笑みながら、気にしないふりをしてくれている。



「ケーキも好きだが、お前は本当に美味そうに食うからな~。…だから好きなお前と好きなケーキを食べるから、なおさら美味い。」



「…っ。もぉ…。」



付き合ってから彼はこんな調子で、私をからかってばかりいる。私の方が6こも年下だから、きっと大人の余裕ってやつなんだろう。彼のこんな言葉に翻弄させられっぱなしなんだけど…。



でも。



今まで、ちゃんと「好き」って言葉にしてくれる人はいなかったから…。



すごく恥ずかしくて、くすぐったいけれど…



“私、愛されてるんだなぁ”



って感じることが出来る。





「一押しのチーズケーキも食べたいけど…この“季節のフルーツたっぷりタルト”っていうのもすごく気になる~。」



そうやって私はようやく二つに候補を絞ったのだけど、そこから決めきれない。



そんな私を見て、土方さんは…



「両方頼めばいいじゃねぇか。」



と、さらっと言う。



「え…でも…(そんなに食べたら太っちゃうかも)。」



そんなことを思って少し悩んでいると、



「なら、俺はこれにする。」



そう言って土方さんが指さしたのは、さっき私が悩んでいたフルーツタルトだった。そしてその手をポンと頭に乗せられて…



「…半分やるよ。」



目を細めて微笑んでくれる。私は、その子ども扱いしたしぐさに拗ねたふりをしながら、胸がドキドキと高鳴るのを押さえられない。





二つのケーキが席に運ばれてきて、私は自然と頬が緩む。土方さんは、頬杖を突きながら、そんな私を見て…ふっと笑った。



「お前の笑った顔は…やっぱり、いいな。」



「それが俺でなくて、そこのケーキに向けられてるってのが、少しばかりしゃくだけどな。」



そして、そう小さく呟いてふいと横を向いた土方さんが、私は可愛くて仕方がないって思う。



そう。付き合ってみて分かったことがもう一つあった。土方さんはヤキモチ妬きだ。この前も道ですれ違った子犬を可愛がっていたら、拗ねてそっぽを向いていた。



土方さんは営業マンで結構立場も上の人らしい。憧れている事務の女の人も多いって聞く。でも、何でそんな人が私なんか・・・って言ったら、



「ばぁか。…俺はお前の笑った顔に惚れたんだよ。それと一生懸命なとこにな。」



そう照れながら、私の気づいていなかった初対面の思い出を語ってくれた。



バイトしてたコーヒー屋さんの常連さんになるまで、土方さんのことを意識したことなかったからなぁ。



でもこうして。



今、土方さんと付き合うことが出来て…たくさんの幸せをもらった。



そしてこれからも…。





「あ…!そうだ。」



「ん?」



やってみたかったことがあるんだ~と、私は思い切って…



「はい、土方さん。あ~~~ん♡」



私の前にあるチーズケーキをひとかけフォークに乗せて土方さんへと差し出す。



「!」



突然の出来事に土方さんは固まったみたいだったけどすぐに、ぱくっとそのケーキを口に入れた。



「…うまいな。」



平静を装ってそう言うけれど、その耳朶はほんのりと赤味がさしているのを私は見逃さなかった。



「ふふふっ。」



私は嬉しくて笑いながら、自分でもケーキを一口食べた。



「お前がそのつもりなら…」



そう言いながら土方さんが手招きするので、何だろうと思って私は顔を近づける。すると…



ぺろっ。



「…な…っ」



「ん?あぁ。このクリームはやはり甘いな。」



土方さんは顔についていたクリームと一緒に私の唇をぺろっと舐めたのだ。



「…///



傍から見たら、ただのバカップルだろう。



でも。



私にとっては初めての…ちゃんと“愛してくれる”彼で、私は周りに何と言われても構わなかった。




★後編へ続く。