「…具合でも悪いのか?」
総司くんが行ってしまってから、とぼとぼと歩いていると、後ろから声を掛けられ振り向くと…
「あ…一くん。」
あたしや総司くんと同じ高校に入学する幼馴染の一くんが、心配そうな顔でこっちを見ていた。
「ううん。そんなことないよ。」
一くんには小さい頃からいつも助けてもらっているし、入学式早々、心配かけてしまっては申し訳ないや。そう思ってあたしは総司くんに会ったことは言わないでおいた。
「…大丈夫ならいいんだが。」
無理はするなよ、と気遣ってくれる一くんの優しさに、あたしは自然と笑顔になった。
やっぱり今日はいい日かも。
それから、一くんと並んで歩いていると、
「あれ…ネクタイ、少し曲がってるよ?」
えんじ色のネクタイが少し斜めになっているのが目に入り、そう声を掛けた。
「な、なに…!?」
一くんは慌てて横を向いてネクタイをいじって向きを直した。
「これで…いいだろうか?」
「う、うん。大丈夫だよ。」
一くんがこんなに動揺するところを初めて見た気がした。
「このネクタイというやつは…厄介だな。昨夜何度も試したんだがなかなか…。」
そうもごもごと言う一くんを見て、あたしはくすくすと笑った。
「わ、笑うならお前もやってみればいい…ッ。」
「あ、ごめんね。バカにしてるとかそんなんじゃなくて。」
可愛いなって思ったから。
その言葉はもっと嫌がるだろうなと思って、あえて飲み込んで、あたしは一くんに微笑んだ。
「そうか…なら…。」
一くんはそう呟くと、真顔に戻ってまっすぐ前を見て歩き出した。あたしは慌ててその背中を追いかけ、横顔を盗み見ると、その頬は少し赤くなっていて…
また、あたしは一くんに隠れてくすくすと笑みをこぼした。
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