泥酔して記憶がない土方くんの知らないあの夜の出来事の前に、美咲のことを少し皆さんにお伝えしたいので…お話は少しさかのぼります。

土方くん視点はこちらへ☆→【魂の記憶~土方side~13】 から14、15あたりの話です。



~美咲の想い~




私があの日、珍しく合コンに行ったのは、大学時代のバイトの後輩である梓の頼みを断れなかったからと…実喜子おばさんのあの時の言葉が気になっていたから。



実喜子おばさんは、いわゆる占いを生業にしている人で、母の姉にあたる人。私が大学生の時、たまたま母のもとへ遊びに来ていた実喜子おばさんは私の顔を見るなりこう言った。






『美咲。おまえは前世を信じる?前世での想い人と、近いうちに出逢えるよ。その人はお前の運命の人となるだろう。』





実喜子おばさんが言うには、私の前世は江戸時代の町娘だったらしい。そんなことを急に言われてもピンとこなかったけど。






『お前が25歳になるまでにその人はお前の前に現れるだろう。』





まさかね~と思っていたけれど、彼氏がいたことはあっても長続きはしないまま24歳を迎えた私は、実喜子おばさんの言っていた25歳を目前に控え、もしかしたら“あの人”とそろそろ出会えるんじゃないかって、少しだけ期待をしていたのかもしれない。




そんなことで、梓の合コンの誘いに乗って来てみたら…



一番手前の席に座っている男と目が合った。睨みつけるように人を見るのはこの人の癖なのだろうか?と思っていると、すぐに目を逸らされた。



なんだったんだろうと思いながらも、気になり、彼の目の前に座った。




「…おいっ!自己紹介、あとはお前だけだぜ?」



原口という軽そうな男が声を掛けるまで、彼は全く私たちの話を聞いていなかったらしい。何しに合コンに来たんだろう?この人。梓はそこそこ可愛いし、妹の友達たちも一般的に見て綺麗な子たちだろうに。




原口くんに声を掛けられてようやく彼は一言だけ口を開いた。



「…土方、誠也。以上。」



(…名前だけ?)


「ってお前それだけかよ~。」



原口くんも苦笑いしているし、梓達は顔を見合わせている。そんな空気をなごますかのように、原口くんは乾杯の音頭を取った。



「…まぁいいや!そんなわけで、俺たちの運命の出会いにかんぱ~い♪」

私はみんなと他愛もない会話をしながら、黙々と目の前の物を箸でつまみながらビールを飲んでいる、土方くんを見ていた。



(顔は、まぁ綺麗だよね。ちょっと目つき悪いけど。)

そんな風に思っていると、彼のグラスが空になりかけているのに気が付いた。



「次、何にします?」



サークル時代、先輩に叩き込まれたのは“目上の人のグラスを空にさせない!”こと。その時の癖で、自然に彼に話しかけていた。



すると、彼は少し驚いた様子で、




「あ、あぁ…じゃあ同じもので。」


なんて言うから、




(…なんか可愛いかも。)


と、新たな一面を見られた気分だな~なんて思いながら、手際よく他の人たちの注文も済ませた。




「…気、利くんだな。」

彼が初めて声を掛けてきたのはそんな言葉だったかな。




「んーん。うちのサークル、厳しくてさ。」



そう言って笑ってから、私は初めから気になっていたことを聞いてみた。




「あ、ところで、土方…さんは、何で合コンに参加したんですか?」



“さん”付けしたのは初対面だし、一応ね。私年上に見えないってよく言われるし。




「あー…向こうの原口って男に無理やり連れてこられたんだよ。」


「あはは。やっぱり。」



「そこで笑うか?」



「…だって私も同じだもん。梓に無理やり。」




話してみると、見かけほど怖い雰囲気はなく、飾らないまっすぐさが伝わってきた。この感じ、楽だな~なんて思いながら、


「まぁ、新しいお酒も来たし、同じ境遇同士飲みましょ。」




と言って、私は彼と他愛もない話を楽しんだ。彼も楽しんでくれた、と思う。





だから…



一次会が終わって彼がさっさと帰ろうとした時は驚いて、慌てて呼び止めようとしたんだけど。



タイミング悪く、どこかから電話がかかってきて…

話すことも、連絡先を交換することもできないまま、彼は慌てた様子で帰ってしまった。





「もう会えないのかな…」



空からはひらひらと今年初めての雪が舞い落ちてきて、地面にぶつかるとすぐに溶けて消えていった―――




まるで、寂しがっている私を慰めてくれているかのように、穏やかに、雪は空から静かに落ちてきていた。