「よ~し、これから二次会だ!カラオケ行くぞ~。」
原口とかなり出来上がった状態の永井は店の外でそう叫んでいた。
「悪い、俺はここで。」
事前に原口に言ってあったから、俺は気兼ねすることなくそう声を掛けてさっさとその場を立ち去ろうとした。
「あ…ちょっと…」
さっきまで目の前で飲んでいた女が声を走り寄って声を掛けてきた瞬間…
「ん?」
ポケットに入れておいた携帯がぶるぶると震えだした。画面には【土方さくら】という文字。
(姉貴?…珍しいな。)
「はい…」
と言って携帯を耳に当てると共に、
「ちょっとあんた今どこにいるのっ??」
姉貴の大声が耳に響いて、俺は思わず携帯を落としそうになった。
「…っ。んだよ、そんな大声出して。」
慌てて持ち直して、電話越しの姉貴に何事かと尋ねると、少しの間沈黙があった。
「・・・」
「…ん?」
「おじいちゃんが…危篤よ。」
「…っ!!」
「どこにいるのか知らないけど、早く病院に来なさい!」
そう言って姉はぶちっと電話を切ってしまった。
(じいさんが…危篤…?)
「…ざけんなっ。」
一言悪態をついて、俺は慌てて走り出した。
体、そんなに悪かったか?それとも俺が気付いてなかっただけ?…こんな時に俺は何を…!?
ただひたすら俺は病院までの道を走り、途中で捕まえたタクシーの中でどうしようもない思いが頭をぐるぐると回っている。
(じいさん…逝くんじゃねぇっ)
『近藤さん…絶対助け出してやる』
土方歳三は近藤さんが捕えられてからこんな思いをしていたのか?
居ても立っても居られない。でも、自分には何もしてやれない。
(じいさんがいなくなっちまったら、誠神社は、俺らの夢はどうなるんだよっ!)
「運転手さん、なるべく急いでくれ…っ。」
俺の尋常でない様子を察してくれたのか、タクシーはできる限りのスピードを出し、裏道を使っているのかほとんど信号に止められず、目的の病院に辿りつくことが出来た。
―――俺が走り出していった後、店の前では一人の女が、誠也が行ってしまった方向をじっと見て佇んでいた。
「もう会えないのかな…」
空からはひらひらと今年初めての雪が舞い落ちてきて、地面にぶつかるとすぐに溶けて消えていった―――
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