「…お前も、思い出したか。」




「お前もってことは…もしかして?」



「近藤勇…新選組局長がわしの前世らしい。…光栄だよなぁ。」




「そっか…やっぱり。」



「いつ、思い出したのだ?」


俺は、小さい頃や最近みた夢のこと。剣道の大会で風間に会って感じたこと。神社を訪れた老人のこと。をかいつまんで説明した。




「それで、なんとなくだけど、最近確信したっていうか…きっとそうなんだろうなと思う。」



俺の心…魂がそうだって言っているような。こんな話、誰も信じないよなぁとも思うが。




それからじいさんは、少し遠い目をして俺が小さかった時のことを教えてくれた。


「実はな、2歳になったばかりのお前が俺に向かって『こんどうさん…すまなかった』と言ったんだ。幼児とは思えない辛そうな表情でな。」


「…覚えてねぇや。」


「それはそうだろう。…わしはそれで、“あぁこの子はトシだ。”と思った。だが、その一回きりで、お前の中のトシが出てくることはなかった。…わしは、思い出さないのなら、それでもかまわんと思っていた。」



「…前世とかって簡単には信じられねぇしなぁ。」




俺は自嘲気味に笑ってじいさんを見ると、じいさんは急に真顔になった。



「で、その前世を確信して、お前はどう思う?」




「あー。思い出したこととか色々話を聞いたこととかを合わせると、土方歳三ってすげぇやつだと思う。男から見てもかっこいいっつうか。…俺なんかが生まれ変わりでよかったのかって思ったりもしたけどな…でも、やっぱり“おれ”だからこそ負けたくねぇっ…!」



そこまで話し、俺は、訳わかんねぇこと言ってるなと呟き、苦笑いして頭を掻いた。




「いやいや。…それでこそ、わしの孫だ!」



じいさんは豪快に笑い声を上げ、強く頷いた。




「ただ、風間の奴には俺も負けちまったからな…。」



あの時のあいつの顔を思い出すだけで、ムカついてくる。




「また、お前たちは戦うのか…。もはや、宿命だな。」



じいさんがニッと笑うので、俺は大きなため息を付いた。それから…ふっと沈黙がおとずれて…




「なぁ…ちづるもどこかにいると思うか?」



「…!おぉ。雪村君か。そうだなぁ…」




じいさんは俺の問いかけに目を細め、遠く見るようにして呟いた。



「わしは…あの人には会えんかった。雪村君はどこかにいるかもしれんし、いないかもしれん。」




そして、前世の記憶がない者もやはり多いから分からんな、と首を横に振った。



「そうだよなぁ。俺もついこの間までわからなかったしな。」




少し残念に思ったが、俺は気を取り直して、じいさんを見てニヤッと笑った。



「でもよ…またこうして近藤さんと出会えたってのは、嬉しいもんだな。」




「…おぃ、まるで、ほんとにトシみたいだな。」



「…なんてな、じいさん。」




それから俺は帰り支度をしながら、今日一番伝えようと思っていた言葉を口にした。



「じいさん…早く病気なんか治して、一緒に神主やろうぜ!んで、俺達で誠神社を日本一の神社にしてやるんだ!そしたら、じいさんは日本一の神主だぜ!」




じいさんが驚いたように俺の顔を見てきたから、俺は照れくさくて、返事も聞かずに「また来る」と言って病室を出た。









「ふっ…。なんだかんだ言っても、トシに似とるわ。宿命には逆らえんわけだなぁ。…あいつなら想う人にも会えるかもしれんな。」



そう呟いた後、勇吾はコホコホと渇いた咳をした。




「…そうしたら何の心配もなく、そっちへ逝けるんだがな。」





そんな勇吾の想いを知ってか知らずか…土方誠也の周りで、宿命の歯車はすでに回り始めていた。