その夜。俺はまた夢を見た。
…誰かが俺の名前を呼んでいる…?
「土方さん、土方さん…!しっかり、してくださいっ…!!」
満開の桜の木の下に倒れている“おれ”の横で、女が…泣いている。
胸が締め付けられる…なんだ、この感情は?切ないような。懐かしいような…。
「ち…ちづる…っ」
「土方さ…っ」
息も絶え絶えになった“おれ”がその女の名前を呼び、頬に触れようと手を伸ばす…が、ぱたりとその手は降ろされてしまう。
『…!!』
その瞬間、パンッと銃声が聞こえたかと思うと、ちづるも“おれ”の上に覆いかぶさるようにして倒れてしまう。
そして、動かなくなった二人の周りで、桜の花びらだけはひらひらと舞い散っている。
『そうか…俺は守れなかったのか…。』
…目を覚ますと、俺は涙を流していた。
あいつを守れなかったことが何より、やり切れない。その土方歳三の想いが誠也にも乗り移ったかのようだった。それから、千鶴への想いの深さも…。
「ちづる…お前はどこにいるんだ?」
そう呟き、俺は思いついたことがあって、出かける準備を始めた。幸運にも今日、大学は休みだ。
じいさんに相談してみよう。あの人なら、きっと…。
「よぉ、元気か?」
「おぉ、誠也か。…この通りだ。」
ベッドの上に座り、本を読んでいたじいさんは、本を置いて力こぶを作って見せた。以前と変わらない笑顔に俺は少しほっとした。
「そうか、なら良かった。ところで…ちょっと聞きたいことがあるんだ。」
俺はベッドの横に置いてあった椅子を引き寄せて座りながら、さっそく話を切り出した。
「なんだ、神社のことか?」
「いや、違う。…俺の、前世のことだ。」
「…っ!」
じいさんははっとして目を見開いた。俺はその目をそらさずに聞いた。
「俺は、新選組の土方歳三…の生まれ変わりなんだろ?」
じいさんはふぅとため息を付いた。その顔には諦めのような喜びのような微笑みが浮かんでいた。