花火大会の会場で、たくさん出ている出店を見ながらわたしたちは歩いていた。
すると、前から歩いてきた浴衣姿の女の人が、
「あ、土方くん。こないだは送ってくれてありがとう。」
「あぁ。」
と、声をかけてきて、じゃあねーと手を振って笑いながら行ってしまった。
「…っ!」
新八兄さんが話してた人だ。やっぱりすごく大人っぽくて綺麗な人。
俯いてしまったわたしを土方さんが覗き込む。
「どうした?どこか痛いのか?」
わたしは顔を上げずに、こないだから気になってたことを聞いた。
「…誰?今の人…。」
「ん?あぁ。同じ塾の子だ。クラスが一緒で、たまたま帰り道一緒になったから、駅まで送って行っただけだぞ。」
土方さんは何でもない事のように答えてくれた。でも、それがなんだか面白くなくて、
「…綺麗な人だね。」
と言ってやった。なんだろ、この気持ち。ただのヤキモチだ…わたし、かわいくないな。そう思うとますます、顔を上げられなかった。
「そうか?俺は・・・」
「お前の方が可愛いと思うけど?」
土方さんはそんなわたしを見て、ニヤッと笑って言った。
「もしかして、愛菜…妬いてんのか?」
「だって!」
思わず声が大きくなった。
「あの人と楽しそうに話してたって…新八兄さんが…っ。」
やばい。泣きそうだわたし…。
「…っ。あー…それは…」
土方さんが話をしようとした、その時…
『ご来場のみなさん、お待たせいたしました。間もなく花火の打ち上げが始まります…』
というアナウンスが傍のスピーカーから聞こえてきた。
「…やべっ、始まっちまう。」
急ぐぞ、と土方さんは半泣きになったわたしの手を引いて、人込みをかけ分けるようにして進んで行った。