花火大会当日。
お昼過ぎに千華さんが浴衣を持ってお姉さんと一緒に家にやってきた。千華さんのお姉さんは浴衣の着付けもできる、千華さんをもっと大人っぽくしたとても綺麗な人だった。
思わず見とれてしまったわたしの隣でぽーっとなっていたのは、もちろん新八兄さん。
「こ、こちらへどうぞっ…!よかったら美味い紅茶でもっ…?!」
新八兄さん、手と足が一緒に出てるよ…。
「ありがとう、お構いなく。愛菜ちゃんの着付けをすぐに始めますので、お兄さんたちはリビングで待っていてくださいね。」
そして笑顔であしらわれてる…わたしと左之兄さんは顔を見合わせて苦笑いをした。
「君枝さん、よろしくお願いします。」
「まかせて。ついでに髪の毛もアップにしましょうね♪」
「そんなこともできるんですか?」
「一応、これでも美容師の端くれだからね♪」
大人で綺麗でかっこいい君枝さんと千華さん。女のわたしでさえ、見とれてしまうくらい美人なのに、気取ったところが全然なくて素敵だなぁ。それに比べてわたしは、美人じゃないし、むしろ子どもっぽいっていうか…。
なんで…
「トシくんが選んだ理由はあなた自身がちゃんと持ってるわよ。」
わたしの心を読んだかのように、着付けをしてもらっているわたしを見て千華さんが微笑んでいた。
「左之がよくあなたの話をするわ。」
「え?」
「ちょっと抜けているところもあるけど、明るくて元気で可愛くて、最高の妹だって♪」
それから、
「初めの頃はあなたの話ばかりするから、妬いていたこともあったけど、実際にあなたに会ってからは私も妹みたいに思っているの。」
勝手にごめんね、と千華さんは笑った。
「いえ、そんな。わたしも千華さんは本当のお姉ちゃんみたいに思ってたから…嬉しいです♪」
「なんだ、そうだったんだ。お互い思っていても言わないとわからないものねー。」
“お互い思っていても言わないとわからない”…
千華さんの言葉が心に響いた。思っていることはちゃんと土方さんに言わないと、伝わらないんだ。きっとわたしの思いも…
「トシくんってね、私と左之が付き合っていると気が付くのに1か月以上かかったのよ。意外と鈍感なのかしら。」
「…っ。」
千華さんは私を見上げてニヤニヤしてる…この人はエスパーだろうか。
「千華さん。いろいろ、ありがとうございます…!」
浴衣のことも。今の言葉も。これから、土方さんに自分らしく会う勇気が湧いた。
「…よしっ♪できたわよ~。」
そうやっておしゃべりをしながら、わたしと千華さんは君枝さんに着付けをしてもらって、兄たちの待つリビングへ降りて行った。
「・・・っ!」
扉を開けると目の前にいた兄たちが目を見開いて、固まっていた。
「な、なに?…どこか変?」
心配になって尋ねると、左之兄さんが近寄ってきて、
「いや。愛菜、すごく…可愛いよ。」
と言っていつもの笑顔を見せてくれたから、ほっとした。
「左之~、私はー??」
千華さんも入ってきて、左之兄さんの腕を取った。
「千華はもちろん…綺麗だよ。」
決まっているじゃないか、と言うように、左之兄さんはわたし達が見ていることもお構いなしで、千華さんの額に軽くキスをした。
…いいなぁ。付き合い長いのに仲良くって♪お互いのことをホントよくわかっている感じだし。わたしも…土方さんとあぁいう風になれたらいいな。