「夏休みなんて、来なければいいのに…。」
はぁ…と、リビングで大きなため息をつく。来週から、普通の高校生だったら待ちに待っているはずの夏休みが始まるのだが…愛菜にとってはまるでいまいましいものであるかのようだ。
「お前なぁ、せっかくの幸せが逃げちまうぞ。」
「だって…土方さんに…はぁ。」
左之兄さんは呆れたように笑うけれど、学校があるかないかはわたしにとってとても重大だ。
憧れの土方さんから告白をされて、晴れてお付き合いをすることになったわたしたちは、学食でお昼を一緒に食べたり、部活の後おしゃべりしながら一緒に帰ったりしていた。土方さんはあんまり口数が多くないから、ほとんどわたしが話していたんだけど、土方さんはどんな話でも聞いてくれたし、時々クラスでの左之兄さんのこととかを話してくれた。
そんな楽しい時間が、夏休みだと味わえない。
しかも…
「こないだから、塾で忙しいみたいで、あまり一緒に帰れなくなったし。」
土方さんの家は建築屋さんで、土方さんも建築士を目指してるから受験勉強をしなくちゃならないんだって。
「夏休みになったら夏期講習とやらで、もっと大変になるって言ってたし。」
「まぁ、それは仕方ねぇなぁ。あいつの志望大結構レベル高いらしいからな。しかも今のところD判定とか言ってたな。」
「それは…応援はするけどぉ。」
ちょっと寂しいだけ、もうちょっとかまってほしいだけ…これってわがままかなぁ。
「まぁ、俺としても可愛い妹のそんな顔は見たくない。そこでだ…」
左之兄さんの満面の笑みと共に、ジャンっと一枚のポスターが目の前に差し出された。
『花火大会☆開催
日時:7月31日(日)19:00~
場所:薄桜川河川公園』
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