「ちったぁいいとこ、見せねぇと…。」

俺は今、剣道の全国大会で大阪の会場に来ていた。いわゆるインカレだ。

「ったく別に応援なんていらねぇのに…。」

単純に応援にかこつけて大阪旅行をしたいだけだと思うが、会場には姉と…もうすぐ4歳になる息子の総一郎が来ていた。さすがあの姉貴の子だけあって奴は…3歳の子どもとはまるで思えない。

「おい、せいや―!あんな奴らに負けてたら…ぼくが、斬っちゃうからね!!?」

そう来たか…そもそも、そんな物騒な言葉をどこで覚えたんだか。だが、それよりも…

「“おにいさん”だ!このガキがっ!」

…年長者を呼び捨てにしてはいけない。だから、俺は正しいことを言っている。なのに何故…

「あんた、総一郎を泣かせたわねっ!」ゴンッ

試合前に姉貴に殴られなければならないのだろうか。殴られた頭を押さえながら総一郎を見ると、べーっと舌を出し笑っていた。やはり嘘泣きか…このガキ。いや、俺も大人だ…ここは、

「…俺の試合、そこでよく見ておけよっ!」

どんな理由であろうと気合が入ったのは事実。見せてやろうじゃねぇか。


次々と相手を斬っていく…一本勝ちしていく俺を見る総一が固まっている。この生意気な甥も少しは俺を尊敬するようになるだろうか。ふっ…この大会に勝ち、そうさせて見せるぜ。

「はぁぁぁぁっ…!!」『面、一本!勝者土方!』

そうして、気合十分な俺は3年目にして初めての決勝に駒を進めた。

総一郎は、気まずそうな顔をしてそっぽを向いている。

「…総一郎、目をつぶるんじゃねぇぞ。」

決勝の相手は…、と対戦する相手の名前と顔を見て、

「これは、今までの奴とは格が違うな…。」

会場の空気も張り詰めたものになったのを感じた。
だが奴は…笑っている?