これは前作【魂の記憶】で千鶴と出会う前の土方さんのお話です。
基本は現代のお話です☆

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――― 子どもの頃、頻繁に同じ夢を見た。恐ろしい顔をした男の人たちが同じ水色の服を着て、街中を歩いている。キラッと光る細長いものを振り回して…誰かの叫び声が聞こえる…

幼かった俺は悪夢に襲われるたび、泣きながら目を覚ましては4つ上の姉の布団に潜り込んで眠っていた。そういう時は、朝起きると決まって布団に大きな地図が出来ていて…朝から姉の拳が飛んできていた。

「…ってぇよぉ!」

「何か文句でも?…私はね、あんたが生まれた時からかーさんの代わりにあんたの面倒を見てんの。おねしょを治すのも私の仕事…体で覚えなさいっ!」

「…ったく、殴られて治るならとっくに治ってるさ。」

姉の言葉に悪態を吐くと、ゴンッと二発目のげんこつが落ちた。

そう。俺の母親は俺を生んですぐに死んだ。そのせいで…俺のせいで愛する妻を失った父親は俺を嫌ってる、と思う。あいつはずっと俺には無関心だから。そういうわけで俺はずっと姉に面倒を見てもらってたから、やっぱり今になっても頭は上がんねぇな。あ、あと俺の面倒を見てくれたのは、神主やってるじいさん。豪快に笑う気のいい人で、この街には慕ってる人も多いらしい。

これが俺の家族。…平凡なもんだ。

俺自身もこの春ようやく三流大学に入学を決めた。まぁ、成績は中の中だが、ずっと習い続けている剣道には多少自信はある。人付き合いは、苦手だ。生まれついた無愛想な顔のせいなのか性格のせいなのか、怖がられることが多い。もちろん彼女なんてできたこともない。まぁ、作りたいとも思わないが。

女なんて、あの姉だけで十分だ!
こないだなんて、いきなり部屋に入ってきたと思ったら、

「ねぇ、あんた、そういえば何で桜華大学だったわけ?」

「あぁ?将来何やるかって考えるのも面倒だからな。神主とやらの勉強でもしとけば、後々じいさんの跡継ぎでもなれるだろ。」

「あんた…馬鹿ね。」

「は?馬鹿とはどういう意味だよ!」

「そのまんまよ。」

人を馬鹿にしたような顔で言うだけ言ってすぐに出て行ってしまった。ただ、去り際の目が少しだけ寂しそうに見えたのは…まぁ気のせいだろ。

そんな俺だからこれからも平凡な人生を歩んでいくんだろうと思っていた。
だからまさか、大学3年の夏にあんな出会いがあるとは思ってもみなかった。