Lisa Thorson | 音温(ネオン)ビーム☆

音温(ネオン)ビーム☆

Jazzyな未知の世界に挑む波瀾万丈ライフ♪ 

Lisa☆ kaorumの恩師☆

私がバークリー音楽院に入学して以来の恩師、リサについて語ってみたいと思った。 知識も友人もいない無の状態でボストンに渡った訳だが、初めての学期は、どの先生をプライベートレッスンに選ぶかがさっぱりわからなかった。 短い教授紹介文リストを見て決めるしかないのである。 しかし噂にはなにやら「リサ」という先生がすごく教え方が上手く、人間的にも素晴らしいというのをちょくちょく耳にしていたので、リサを選んだのがきっかけである。 しかし大人気の教授だけに、新入生が入れるスポットも少なく、私はぎりぎり最後のスポットをゲットできた幸運者なのだった。

ほとんどの生徒がすでに専門学校や音大で歌を本格的に勉強していた人が多い中、私は度素人中の度素人で、初めての学期のプライベートレッスンでは緊張しまくったものだが、リサはやさしく微笑みながら私の今までの経験や、好きなジャンル、力を入れたい事、どんなテクニックを身につけたいかなどを聞いて行く。 そして全て聞いた後、人それぞれ違うレベルで入って来ているから、その人がどれだけ上手いかではなく、どれだけ努力して上達したかをベースに自分は評価するからあなたは自分のやれることをしっかりやればいいのよ。と私の緊張をほぐしてくれた。

この先生のすごいところは、とにかくいっぱいありすぎるのだ。 まず、生徒の歌を聴いて、お医者さんが処方箋を出す様に、その生徒の歌い方のダメな点を見つけ分析して、どうしたら良くなるかをサラッとコメントする。 そしてその場でアドバイス通りの事を試させて、体感させるのだ。 それが何とも適切で、ダイレクトに効くのだ! この先生の特徴は、生徒の歌の癖やスタイルを決してリサ流にしようとせず、その生徒のスタイルをなるべく生かしながらいかにして良いものを引き出すか、という所だ。 ほとんどの教授が自分のスタイルを押し付けたり徹底的に矯正させたりする所、彼女は腕利きのドクターが手術で悪い患部だけを取り除き、なるべく体を傷つけない様にするようなイメージだ。 副作用の強いクスリを投与するより、自己回復力をつけさせる様なレッスンの仕方が特徴だ。 なので、劇的に自分のスタイルを変えたいと思う人には不向きな先生なのかもしれない。

リサは手が不自由だ。 指も全く動かない。 そして下半身不随で車椅子で生活している。 大学生のときは、ミュージカルスターを夢見て有名音大に通っていたが、不意の大事故に遭遇してしまい、体の自由を奪われたと同時に夢までも諦めざるを得なかったと言う、身の裂ける様な壮絶な若き人生を送っている。 絶望の中、彼女を救ったのは神様から与えられた美しい声と、その声を使って新たな道を切り開こうと決意する強い光がさしてきたことだ。 それからは、大学院で声楽を本格的に学び、自分には歌を教える事が出来るという新たな才能に気付かされ、いろんな音楽を学ぶうちに、ジャズに出会い今のジャズシンガーとしての自分がいるらしい。 リサがジャズを歌い始めたのは30歳を過ぎてからだそうだ。 彼女の歌声には酸いも甘いも知り尽くしている様なドキっとくる様な独特な哀愁がある。いつも明るく、少女の様なチャーミングな所があり、私がリサに指摘された所を意識しすぎるあまり鼻の穴をめいっぱい広げて硬直して歌っている私に大爆笑したり、私が指摘されたポイントを忘れて途中で「ハッ」と気付き歌ってしまったときの顔がおもしろいらしく、お互い目が合うとムズムズ笑ってしまうのだ。彼女のプライベートレッスンは本当に楽しくてあっという間に過ぎてしまう。 リサは一緒にいると体が不自由な事を忘れてしまう程、実に普通にしている。 車も運転するし、料理もする。 どうやってメールを打つんだろう、、?と思っていたら、工夫して手首に固定バンドを着けその先にペンのようなものを取り付けて、それでキーボードを叩いていた。 あんなに明るいが人一倍努力をしている人なんだな、、。と思った。 いろんな経験しているからこそ、人の心に響く様な温かい良い歌が歌えるんだろうな、、、。って思った。 本当に器の大きさを感じずにはいられない。 自分の弱さが恥ずかしく思えた。

そんなリサが昨日言った。 
「私だって30過ぎてからジャズを始めたんだし、今既に上手い人はスタートがあなたより早かっただけよ。 もっと自分の良い所をみなさい。 もっと自分の才能を信じなさい。 あなたにはその大事な所が欠けているのよ。」と腕を伸ばし、動かない手のひらで私の手をとり、両手で握ってくれた。 初めてリサの手に触れた。 温かかった。 リサには歌以外にも、人間としてのもっと大事なものをいっぱい教えてもらった。 あと1学期で卒業。 リサとも来学期で最後である。 いろんな想いが込み上げてくる今日この頃だ。