
天声人語 2014年10月8日(水)付
落とし穴にストンとはまったかのようだったという。先日、知人が東京のJR有楽町駅のホームから線路に転落した。午後11時前で酒が入っていた。飲んだ風邪薬の影響もあったのか、直前の記憶がない▼足に強い衝撃を受けてハッと我に返り、すぐに自力でホームにはい上がった。1分か2分後に電車が入ってきた。ぞっとする話である。幸い足に痛みが残った程度ですんだが、危なかった▼線路に転落して、あるいはホームの上で、電車に接触する死傷事故が増えている。国交省によると、2013年度は全国で220件発生し、30人が亡くなった。10年前は100件余りだから倍増である。近年は、酔った人の事故が半数を超す▼酔客はともかく、とりわけ視覚障害のある方々にとって駅のホームは危険な場所である。痛ましい事故をなくせないか。点字ブロックだけでは頼りない。転落を防げる可動式のホームドアをもっと普及させてほしいという声は切実だ▼今年3月末までにドアが設けられたのは全国で583駅。徐々に増えてはいる。国交省は東京五輪のある20年度までに800駅とする目標を掲げる。着実に進めてほしい。1駅あたり数億から十数億円もかかる大仕事だ。多額の税金も投入される。社会的な合意を取りつけていく作業が欠かせない▼ホームドアはむろん万能ではない。自分の身を守る緊張感を絶やさぬようにしよう。体の不自由な人が困っていれば声をかける。必要なら手助けをすることも心がけたい。
パニックになってからは
電車にもほとんど乗らなくなった
弱いものを思いやる対策
ありがたいですよね
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