
アイスランド
アイスランドという名称は氷や雪,それにイグルーのような氷でできた家を連想させるかもしれません。地図を見ると,寒い地域だという印象がいっそう深まることでしょう。アイスランドのような北の果てに住む人はそれほど多くありません。それもそのはず,この島国の北端は北極圏にほぼ接しているのです。
しかし実際のところ,アイスランドはその名前や位置から想像するほど寒い国ではありません。赤道の少し北から流れてくる暖流のおかげで気候はそれほど厳しくありませんし,イグルーもありません。アイスランド社会は非常に近代化されており,人々は地熱利用の暖房装置を備えた立派な家に住んでいます。
アイスランドは両極端の国です。真冬の間,太陽が水平線上に顔をのぞかせるのは一日のうちわずか数時間です。目をみはるようなオーロラが冬の長く暗い夜をしばしば彩りますが,太陽のほうは姿を現わすのを嫌がっているかのようです。しかし夏になると,それを補って余りあるほどに,夜の間も明るい日が何か月も続きます。アイスランドの北端では,太陽が何週間も水平線すれすれの所にとどまり,真夜中でも太陽を見ることができます。
アイスランドは氷と火の国と呼ばれていますが,まさにそのような所です。国土の約10分の1は氷河に覆われていますし,火山活動や地熱活動によって生じる火もあります。これまでに多くの火山が噴火しており,ここ数世紀の間は平均して五,六年に1度,噴火が起きています。温泉もたくさんあります。
人口密度の低いこの国は自然が美しく,野生生物がたくさんいます。澄んだ空気,見事な滝,険しい山々,広大な原野などを見ようと,大勢の観光客がやって来ます。春の初めには渡り鳥が,夏の生息地となる湿地帯や海岸沿いの断崖に帰ってきます。中でもキョクアジサシは,毎年の渡りで地球の反対側の南極大陸まで旅をします。ツノメドリ,ケワタガモ,カモメなども断崖や海岸で多く見かけます。田園地方では羊が草をはんでおり,高地では小型で丈夫なアイスランド・ポニーが放牧されています。初夏には大量のサケが戻ってきて,産卵のために川を遡上し,滝を登ります。
アイスランドの29万570人の住民は,1,100年以上前に定住したバイキングの子孫です。バイキングはおもにノルウェーからやって来て,古ノルド語を話しました。この古ノルド語に由来するアイスランド語は,文学的伝統が大切にされてきたこと,また国が外界から比較的隔絶されていたこともあって,おおむね元の姿を保っています。ですから現代の人々でも,おもに13世紀に書かれた古いサガ(英雄物語)を読むことができます。アイスランド人は母国語を誇りにしており,外国語が入り込むのを嫌います。
初期の定住者の大半は“異教徒”であり,アイスランド人を“キリスト教”に改宗させる試みは10世紀後半になるまで行なわれませんでした。そして10世紀の終わりごろ,アイスランドの著名な指導者たちが改宗します。西暦1000年には,アルシングと呼ばれるアイスランドの議会が,二つの宗教を評価するよう異教の重鎮の一人に依頼しました。驚いたことに,その重鎮は,一つの信仰つまり“キリスト教”のみを実践すべきだとの判断を下しました。この判断は大きな反対もなく受け入れられたようです。ただし,ひそかに異教の神々を崇拝し,異教の習慣を行ない続ける余地も残されていました。この決定は宗教上の裁定というよりも政治的な駆け引きの色が濃いものでしたが,これにより,独自の考えを持ちながらも宗教上の問題には寛容というアイスランド人の国民性が生まれた,と言えそうです。
今日,人口の約90%は国教の福音ルーテル教会に属しています。ほとんどの家庭に聖書はありますが,それを神の言葉であると信じる人は多くありません。
アイスランドは両極端の国です。真冬の間,太陽が水平線上に顔をのぞかせるのは一日のうちわずか数時間です。目をみはるようなオーロラが冬の長く暗い夜をしばしば彩りますが,太陽のほうは姿を現わすのを嫌がっているかのようです。しかし夏になると,それを補って余りあるほどに,夜の間も明るい日が何か月も続きます。アイスランドの北端では,太陽が何週間も水平線すれすれの所にとどまり,真夜中でも太陽を見ることができます。
アイスランドは氷と火の国と呼ばれていますが,まさにそのような所です。国土の約10分の1は氷河に覆われていますし,火山活動や地熱活動によって生じる火もあります。これまでに多くの火山が噴火しており,ここ数世紀の間は平均して五,六年に1度,噴火が起きています。温泉もたくさんあります。
人口密度の低いこの国は自然が美しく,野生生物がたくさんいます。澄んだ空気,見事な滝,険しい山々,広大な原野などを見ようと,大勢の観光客がやって来ます。春の初めには渡り鳥が,夏の生息地となる湿地帯や海岸沿いの断崖に帰ってきます。中でもキョクアジサシは,毎年の渡りで地球の反対側の南極大陸まで旅をします。ツノメドリ,ケワタガモ,カモメなども断崖や海岸で多く見かけます。田園地方では羊が草をはんでおり,高地では小型で丈夫なアイスランド・ポニーが放牧されています。初夏には大量のサケが戻ってきて,産卵のために川を遡上し,滝を登ります。
アイスランドの29万570人の住民は,1,100年以上前に定住したバイキングの子孫です。バイキングはおもにノルウェーからやって来て,古ノルド語を話しました。この古ノルド語に由来するアイスランド語は,文学的伝統が大切にされてきたこと,また国が外界から比較的隔絶されていたこともあって,おおむね元の姿を保っています。ですから現代の人々でも,おもに13世紀に書かれた古いサガ(英雄物語)を読むことができます。アイスランド人は母国語を誇りにしており,外国語が入り込むのを嫌います。
初期の定住者の大半は“異教徒”であり,アイスランド人を“キリスト教”に改宗させる試みは10世紀後半になるまで行なわれませんでした。そして10世紀の終わりごろ,アイスランドの著名な指導者たちが改宗します。西暦1000年には,アルシングと呼ばれるアイスランドの議会が,二つの宗教を評価するよう異教の重鎮の一人に依頼しました。驚いたことに,その重鎮は,一つの信仰つまり“キリスト教”のみを実践すべきだとの判断を下しました。この判断は大きな反対もなく受け入れられたようです。ただし,ひそかに異教の神々を崇拝し,異教の習慣を行ない続ける余地も残されていました。この決定は宗教上の裁定というよりも政治的な駆け引きの色が濃いものでしたが,これにより,独自の考えを持ちながらも宗教上の問題には寛容というアイスランド人の国民性が生まれた,と言えそうです。
今日,人口の約90%は国教の福音ルーテル教会に属しています。ほとんどの家庭に聖書はありますが,それを神の言葉であると信じる人は多くありません。
