

ある程度の抑うつ状態は神経症の人でも経験しますが,精神病の抑うつ状態は普通もっとひどいもので,いっそう重い病気のあることを示す症状です。程度はいろいろあっても,抑うつ症状はアメリカで「最も多い精神病」とされており,国連世界保健機構も世界の一番大きな健康上の問題としてこの病気を挙げました。この病気が広まっていることから,現代は「憂うつな時代」と呼ばれています。
抑うつ状態と関連して孤独感,とくに無力感,絶望感といった症状がみられます。この病気の人の間では一般人の36倍に上る多くの自殺があるのも,うなずけるでしょう。うつ病にかかった人に多く見られるのは,微小妄想あるいは罪業妄想です。また食物,衣服,異性などにほとんど関心を示さなくなります。このような徴候は,俗に“神経衰弱”と呼ばれる病気にもみられます。 うつ病は男性よりも女性に多い病気です。
この症状の進んだものは「うつ病」と呼ばれています。この病気は興奮と活動の時期と抑うつ状態の時期を交互に繰り返すことも多く,この『陽気になったり憂うつになったりする』状態は「そううつ」状態と名付けられています。どちらかというと攻撃的で破壊的なのはこれらの人々ですが,「躁病の状態」の時にはこの同じ人々が時として非常な創造性を発揮します。