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ある人たちが試みた治療法

うつ病患者の治療には,優しさと恐怖という両極端の特質が表われています。今日の医師たちは,精神療法によって患者を快方に向かわせることができないと,“ショック療法”に訴える場合があります。この治療法は,1930年代の初めごろから用いられるようになりました。マンフレッド・ザーケルは,1933年に,精神療法の一つとしてのインシュリン・ショック療法を開発しました。その二年後,ブタペストの精神科医バン・メデューナは,メトラゾールを使っててんかん状のけいれんを起こさせました。多くの場合,こうしたショック療法は,一定期間,うつ病の重い症状を和らげます。しかし,インシュリン・ショック療法の効果を最もよくするには,それを30時間から50時間続けねばなりません。その上,患者の看護に多額の費用を要します。メトラゾール・ショック療法の場合,致命的な結果や骨折などの原因になりかねません。

これらの治療法に取って代わったのがおもに“電撃療法”(EST)です。この治療法は,“電気けいれん療法”とも呼ばれています。今でもよく行なわれるこの治療法は,脳に電流を通し,それによって体にけいれんを起こさせます。普通は,事前に薬が与えられているので,患者は何も感じません。しかし,電撃療法の後には,頭の混乱した状態が残ります。それが,数週間にわたる記憶喪失症や不治の脳障害を引き起こしたこともあります。さらに,「精神医学の歴史」と題する本に記されているとおり,「ショック療法は,症状を和らげるにすぎず,病気の根本に潜んでいる心理的障害の治療にはならない」と言えます。

うつ病を治療する別の方法は精神外科手術です。これには,前頭葉と視床をつないでいる神経繊維を切断することが関係してきます。この手術が成功すれば,緊張や不安を緩和する場合があります。しかし,この手術の結果,過去の記憶を失った患者や,消極的になって植物人間同様の生活をするようになった患者もいます。精神外科手術を一度受けてしまうと,その結果を元に戻すことはできません。

従来の治療法がしばしば失敗してきたために,うつ病を全く異なった見地から見るようになった医師もいます。それにはどんな事柄が関係していますか。