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ゼネコン大手が「談合との決別」を申し合わせた。そんな記事が本紙に載ったのは、昨年の暮れだった。おや、談合をやめるために談合かと、少々斜めの読み方をした。

 今度は、防衛施設庁の工事を巡る談合が摘発された。相変わらずの官と業の癒着だ。それにしても、企業のモラルが問われる事件が続く。耐震偽装、取引偽装、偽装工事、談合。いずれも利益を追求するあまり、法を踏みはずした疑いがある。利益は数字で示される。数字を引き上げるために、不正を働く。世間には、こんな会社ばかりがあるはずもないが、これだけ重なると気がめいりそうだ。

 こんな時には、数字の争いからは遠い、地に足の着いたものに目を向けたくなる。例えば……ホウレン草のおひたし。

 食卓の上に小鉢があり、ホウレン草がこんもりと盛りつけてある。そこに朝の日が差し込んでくる。深緑の葉のへりが白く光る。紅色の根元も輝いて、のせたカツオ節が身をくねらせる。小さいながらも躍動感のある一景だ。

 ホウレン草を育てる人が居て、街まで運ぶ人が居る。カツオを釣る人が居て、ゆでたり乾かしたりする人が居る。陸と海から来た物の朝日の下の出合いはささやかだが、その後ろには、多くの人の働きが連なっている。

 こうした物たちを扱う世界も、利益や数字と無縁ではない。しかしそれはそれとして、目の前にある物たちは、地道で真っ当な営みのありかを感じさせる。利益や数字だけが物を言う世の中はやはり息苦しい。そう思いながら、日に照らされた緑の一片をつまんだ。

どうして、そんなにお金が欲しいんだろう?
食べるものも、着るものと、住む家があれば
それで満足すればいいのに。
舞が婆なんだね。
^^